「(受領の際に)『秘密』と言われた」「地検から『言うな』と言われて」。昨年7月の参院選をめぐり、前法相の衆院議員、河井克行容疑者(57)と妻で参院議員の案里容疑者(46)が公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕された事件で、夫妻逮捕から1週間となった25日、現金を受け取ったとされる広島県内の地元議員らが、次々と口を開き始めた。

 石橋竜史・広島市議(48)は25日、同市役所で会見し、昨年5月に30万円を受領したと明かした。その際に克行議員は「2人だけの秘密」と発言したという。過去にも克行議員から「(収支報告書に)記載する義務はないから」と、10万円をカバンにねじ込まれたこともあったと述べ、「(克行議員に)コントロールされていく、手足を縛られていくような感覚があった」とふり返った。

河井氏側から現金を受け取った地元議員たちの「告白」はさらに続く。

 支援者や家族のことに話が及ぶと時折涙を見せた石橋市議。会見については「このままでは克行議員をかばうことになりかねないと思った」と説明。一方で報道で名前が明かされるのなら先に、という気持ちもゼロではなかったという。「清濁併せのむ世界だが、きれいごとが通じるような政治になれば」と話し、こう心境を告白した。「克明に皆さんに伝えたことで、本当にほっとした」

 府中町議で案里議員の後援会幹部の繁政(しげまさ)秀子議員(78)も25日、報道各社を前に、克行議員から「安倍さんからです」と30万円を渡されたと証言。首相の名前を出されたため断りきれず受け取ったが「使っていない」と説明した。

 受領を認め、辞職を表明した広島県三原市の天満祥典(よしのり)市長(73)らの相次ぐ「告白」。これまで受領を否定していた議員らも25日、朝日新聞の個別取材に認めた。

買収される側も犯罪

 ある県議は、「いずれ明らかになること」。昨年5月以降、克行議員から計50万円を受け取り、「領収書切りましょうか」と話したが、無視されたという。別の地方議員も、50万円を受け取ったと認めた。「検察から『ほかに言うな』と言われ、本当のことが言えなかった。夫妻が逮捕され、区切りだと思った」とした上で、記者にこう言った。「せめて、あなたに話してすっきりさせたかった」

 公選法では、投票や票の取りまとめを依頼する趣旨だと認識して金品をもらった側も、処罰の対象とする規定がある。「被買収」と呼ばれ、法定刑は3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金。受け取った金を返しても、罪は成立する可能性がある。

 買収や被買収は、一つ一つの金銭授受がそれぞれ罪を構成するとされる。このため検察側は、現金を受け取った疑いのある94人それぞれについて、処分をすべきかどうかも含め、立件の可否を検討する。処分にあたっては、受け取った金額、選挙運動で果たした役割、議員辞職をしているかなどを総合的に考慮するとみられる。

 克行議員が一方的に現金を置いていった、と朝日新聞の取材に証言する地元議員も多く、そうした授受の状況も判断に影響を与えそうだ。

 東京地検特捜部は逮捕容疑で現金配布先とした94人の名前について、明らかにしていない。「94人のリストが手に入らないか」「わしの名前も公開されるじゃろうか」「会見するべきか」……。地元議員らの心は揺れている。