富裕層は避暑地へ…コロナで見えた格差、このままですか

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聞き手 機動特派員・金成隆一
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 新型コロナウイルスの感染拡大は、人々を分かつ米国の資本主義社会のひずみを改めて浮き彫りにした。格差の拡大がもたらす厳しい現実を指摘し続けてきた米経済学者のロバート・ライシュさんはいま、何を思うのか。(聞き手 機動特派員・金成隆一)

 ――新型コロナウイルスの打撃による経済の先行きが心配です。どう見ていますか。

 「パンデミック前と同程度に健康な状態に戻るには長くかかります。米国が貿易戦争を激化させれば、更に悪化するでしょう。トランプ大統領は経済において他国を敵と捉えているようで、特にコロナ禍や景気後退期には危険です。いま必要なのは各国の協調で、貿易を元の水準に戻し、中央銀行は緊密に連携しなければならない。巨大な景気刺激策も必要です」

 ――米国では今回のコロナ禍で、党派を超えた国民から「最も裕福な国でなぜマスクなどを買えないのか」という不満が出ました。

 「理由は二つ。一つはトランプ政権が全く準備できていなかったこと。感染拡大はでっち上げだと示唆して国民に危険性を伝えず、約2カ月を無駄にした。悲劇です。この間にマスクなどの製造を要請し、準備できた。二つ目は全米規模で調整する政権機能がないことです。州政府や自治体、個々の病院が自力でマスクなどを探すように政権から言われ、米連邦緊急事態管理庁も獲得競争に参入した。カオスでした」

 ――世界的なサプライチェーン(部品などの供給網)の機能不全ではないと?

 「サプライチェーンは失敗していません。マネジメントとリーダーシップの完全な失敗です」

 ――11月の大統領選に向けて、「国内で作るべきだ」「中国のような国への依存度を下げるべきだ」といった声が高まりそうです。

 「そうならないことを願います。グローバルなサプライチェーンを維持することの方が圧倒的に効率的な上、貿易制限は景気の更なる悪化をもたらします。1930年代は大恐慌下で保護主義に向かい、経済をさらに悪化させた。可能な範囲で保護主義を避けなければなりません」

 ――4月の英紙では今回のコロナ危機が、米国社会の職種による分断と格差を顕在化したと論じましたね。

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 「今回のようなパンデミック…

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