「我がこと」阻む心の垣根 米国の病、そして日本にも…

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アメリカ総局長・沢村亙
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日曜に想う

 「ママ。僕はおしまいだ」

 米中西部ミネアポリスで白人警官にひざで首を押さえつけられ、「息ができない」と訴えて亡くなった黒人男性のジョージ・フロイドさんはこときれる前、2年前に他界した母親を呼んでいた。

 悲痛な声は、黒人の母親たちの側からも聞こえてくる。ある女性は母親交流サイトに「黒人の男の子を育てるのは恐ろしい祝福」と書いた。ココナツの香りがする愛くるしいわが子が、成長するにつれて「社会の脅威」のように扱われ、果てに命を奪われるかもしれない恐怖。

 博士号を持つエンジニアのトレーシー・ジャミソンフックスさんは「私は白人社会で頑張ってきた。10歳と7歳の息子はとことん守る」と誓いながらも、「彼らがティーンエージャーになって、周囲にどう見られるかは不安」と、揺れる胸の内を私に漏らした。

 事件と抗議デモが問うたのは警察に巣くう人種差別だけではない。白人の倍近い割合で黒人の命を奪った新型コロナウイルスパンデミックは、生活格差を冷酷にえぐりだした。だが、まだある。

     ◇

 マスクがない場合には顔を隠せるバンダナやスカーフなどで代用できるとした保健当局の指針に、医大職員のアーロン・トマスさんは「強盗に間違われかねない格好は勧めない」と異を唱えた。「ひとりの黒人として、自分の生死を左右するのが何かは理解している」

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 「黒人として」のひと言が私…

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