陸上イージス頓挫、安保戦略初改定へ 盾持てぬなら矛?

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二階堂友紀 相原亮 編集委員・佐藤武嗣
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 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画撤回の方針を受け、安倍政権国家安全保障戦略(NSS)を初改定する方針を固めた。ミサイル防衛のあり方を見直すのにあわせて、経済安全保障、敵基地攻撃能力の保有などについても議論する。今秋にも設置する予定の有識者懇談会の議論を経て、年末にもNSSを改定する考えだ。

策定から7年で初改定へ 陸上イージス計画停止で急浮上

 安倍政権は2013年12月、政府の外交・防衛政策の基本方針として、歴代政権で初めてNSSを策定した。NSSでは「積極的平和主義」を掲げ、国家安全保障上の課題を整理し、今後の方向性を示した。

 その後、北朝鮮のミサイル技術は飛躍的に向上し、中国の海洋進出が進んだ。宇宙やサイバー、経済安全保障といった新たな領域の重要性も増した。しかし、菅義偉官房長官は今月5日の記者会見で改定の必要性を問われ「基本方針は容易に変わるものでなく、現時点で見直す必要があるとは考えていない」と否定していた。

 政権内で突如、NSSの改定が浮上したのは、河野太郎防衛相が15日に陸上イージスの配備計画停止を発表したのがきっかけだった。安倍晋三首相が12日に河野氏の方針を了承すると、政府高官らは15日にかけて米側に計画停止を伝達。陸上イージスを導入しない場合でも、防衛能力を維持する考えを伝えた。

 陸上イージスに代わるミサイル防衛について検討が始まり、19日にNSSを初改定する方針が固まった。ミサイル防衛に加え、「ポストコロナ」「経済安全保障」が主要な論点となる。

 一方、13年12月にNSSを策定した際も、防衛計画の大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画中期防)が改定されている。政権幹部によると、今回もNSSとともに防衛大綱と中期防を見直す方針だ。

敵基地攻撃能力、危うさはらむ「検討」

 陸上イージスの計画停止が発表された翌16日、小野寺五典元防衛相は自民党の会合で、「ミサイル防衛が技術的に難しいとなれば、抑止力のために反撃能力を持つべきではないか」と述べ、敵基地攻撃能力を保有する必要性を強調した。

 首相も18日の記者会見で「相手の能力が上がっていく中、今までの議論に閉じこもっていていいのか。自民党などの提案を受け止めていかなければいけない」と検討する姿勢を示した。

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