見知らぬ少年が投げつけた石 彼はプロドラマーになった

有料記事いつも、どこかで

若松真平
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 松田聖子がデビューした翌年の1981年。僕は「彼」に出会った。

 大学1年生の僕は、奈良の実家で、両親に買ってもらったドラムセットをたたくのが好きだった。友達とバンドを組み、ビートルズの曲をコピーしていた。時代は「昭和」だった。

 いつもは、近所の迷惑にならないように雨戸を閉めていた。でも、その日は練習するうちに暑くなって、外の空気を入れたくて窓を開けた。

 2階から隣の空き地に目をやると、制服姿の2人の中学生がこっちを見ている。「ドラムをたたくのを見てみたいんですが……」

 大きな音を出すことに近所への負い目もあった。「ええよ。表から入って」。あとから知ったのだけど、雨戸に向けて何度も小石を投げていたらしい。

 しばらくたたいて見せてから、「やってみる?」と聞いた。1人は遠慮したけど、彼は「そうですか……。それじゃ」と食いついてきた。

 名前は平井景。初めてのわりには、リズムらしき音が響いた。家で菜箸を使って練習していたそうだ。「結構、たたけるやん」。感想を言い、使わなくなったスティックをあげた。

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 それからも彼は訪ねてきた…

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