(小説 火の鳥 大地編)58 桜庭一樹 上海はまさに戦場だった

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 私は運転手に「今日は何年何月何日かね」と聞く。すると、なんと一九三七年の七月後半であった。支那事変(日中戦争)がもう始まってるじゃないか! 私は關東軍のビル前であわてて車を降り、「東條さん!」と探し回った。と、「貴様ぁ!」という石原莞爾の怒声が聞こえてきた。ここかと部屋に入ると、東條と石原が互いの襟を摑(つか)んで揉(も)み合い、武藤章という作戦課長が「お、落ち着いてください」と割って入ったところだった。

「東條! 貴様だましたな!“エレキテル太郎九号”の目盛(めもり)をこっそり開戦後の日付にしておき、レバーを引いただろう。ぼくは戦争自体を阻止したかったのだ!」

「落ち着いて、くだ……。なに、エレキテル……?」

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 と武藤が困惑する。東條は胸…

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