3密の休憩室、体調不良でも勤務 相次ぐ院内感染の死角

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市野塊 後藤一也
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 新型コロナウイルスの感染拡大はいったん落ち着いたが、いまだ止まらないのが「院内感染」だ。厚生労働省によると、新型コロナによる院内感染の事例は、10日までに全国で102件にのぼるという。感染症に人一倍気を使うはずの病院が、クラスター(感染者集団)の現場となってしまう。その「死角」はどこにあるのか。

国内最大のクラスター

 東京都台東区の永寿総合病院では、患者131人、医師や看護師ら83人の計214人が感染と、国内で最大規模のクラスター現場となった。3月23日に入院患者2人の新型コロナ感染がわかって以降、救急の受け入れを停止するなど、400床をもつ地域の中核病院としての機能が止まった。ようやく今月8日に、予定入院や手術、紹介のある初診患者の外来、救急の機能を順次再開すると発表した。

 湯浅祐二院長は「地域医療の中核病院としての役割を果たせない状況となり、大変申し訳なく思う」と、ホームページでおわびした。入院患者43人が亡くなったが、約半数が血液疾患で、そのほかは抗がん剤治療などで入院中だった。

 厚労省クラスター班は現地で調査し、感染がここまで広がった理由を分析した。職員が密に過ごす休憩室や食堂、ロッカー室などで感染が広がったことや、入院患者のもともとの病気の症状と新型コロナの症状が似ていて感染に気づくのが遅れたことなど、いくつかの要因を挙げた。

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 こうした指摘を踏まえ、同病院は、PCR検査と院内検査を活用した早期診断▽職員全員のマスク着用の徹底▽頻繁な手指消毒▽休憩室での複数の職員による飲食の禁止などの予防策をとると公表した。

「コロナ」ならではの死角

 16日時点で職員と患者計54人が感染した東京都の武蔵野中央病院や、1日時点で計27人が感染した北九州市の北九州総合病院など、緊急事態宣言が解除された後も、全国の病院で院内感染が相次いでいる。

 「パソコンやプリンターなどを多くのスタッフが共同で使用」「狭い休憩室で一緒に休憩」「更衣室を使う時間が重複」「職員が体調不良でも勤務を続けざるを得ない場合があった」――。政府の専門家会議が5月29日に出した提言書は、従来の院内感染では「死角」となるような問題点も指摘された。

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 新型コロナの院内感染は日本…

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