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「多数意見といえるのか」判決直前、メモが突いた矛盾

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編集委員・豊秀一
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 「相対立する意見を無理に包容させたものとしか考えられない」。統治行為論を初めて採用した砂川事件最高裁判決について、判決原案のまとめ方を批判する内部メモが見つかった。統治行為論は、臨時国会の召集義務をめぐって10日に判決があった那覇地裁の訴訟でも国側が主張。有無を言わせずに政治判断を正当化する手段としても使われてきた。判決はどんな流れで生まれたのか。そしてメモは何を意味するのか。(編集委員・豊秀一

記事の最後には、今回見つかった「調査官メモ」の全文を掲載しています。

 砂川事件の最高裁判決をめぐっては、1959年8月3日に在日米大使館が米国務長官(当時)にあてた公文書の存在が知られている。布川玲子・元山梨学院大教授(法哲学)が米国立公文書館から入手した。

 それによると、田中耕太郎・最高裁長官(当時)は首席公使に、①判決は12月となるだろう②判決では世論を動揺させるような少数意見を避け、実質的な全員一致の判決を生み出すような評議が進むことを期待している――と伝えた、とある。

 実際、判決は12月16日に言い渡され、結論は全員一致となった。

 最高裁がこの判決期日を検察側と弁護側に伝えたのは、11月25日の水曜日。大法廷の合議は水曜日に行われる慣例で、当時もこの慣例通りであれば判決までに合議できるのは、12月2日と9日の2回となる。今回見つかったメモが書かれたのは12月5日。最後の合議の機会の4日前にあたる。

メモが判決に与えた影響は

 判決直前のメモは、15人の裁判官の審議に影響を与えたのだろうか。

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 高見勝利・上智大名誉教授(…

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