北海道)「第2波」、医療崩壊に現実味 新型コロナ 

斎藤徹
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 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための北海道独自の休業要請が全面解除されてから、2週間ほどになる。北海道は2月下旬からの感染拡大の「第1波」、4月からは「第2波」に襲われた。第2波は6月に入り落ち着きを見せつつあるが、新たな感染者はいまも連日確認されている。第1波、第2波と対峙(たいじ)した北海道の3カ月あまりを振り返る。(斎藤徹)

 北海道が第1波に襲われたのは2月下旬から。鈴木直道知事は28日に、独自の「緊急事態宣言」を出し、道民に外出自粛を求めた。対策はおおむね功を奏し、鈴木知事は3月19日、宣言を解除。日常生活を取り戻したかに見えた。

 だが「日常」は長く続かなかった。4月からふたたび感染が拡大し始めたのだ。4月9日、1日当たりの新規感染者としては当時最多の18人を記録した。

 5日連続で10人以上の新規感染者が確認された4月12日、道と札幌市は「緊急共同宣言」を出し、休校や接客を伴う飲食店の利用自粛を道民に要請した。鈴木知事は「第2波とも言える感染拡大の危機」と述べた。初めて「第2波」という言葉を用いて、新たな流行の始まりに警戒を呼びかけた。

 16日には国が緊急事態宣言の対象を北海道を含む全国に拡大した。鈴木知事は全道を対象とする休業や外出自粛を、ふたたび要請することになった。

 第1波と第2波は、その由来が異なっていたとみられている。

 第1波は、北海道に中国人観光客がどっと押し寄せ、内外から計202万人を集めた「さっぽろ雪まつり」(1月31日~2月11日)の後にやってきた。国立感染症研究所の研究によれば、国内で中国由来のウイルスの感染が拡大した時期に重なるという。

 一方、第2波の時期は欧州由来のウイルスが国内に入り込んだ時期と重なっている。3月末から4月にかけて異動や転出入で首都圏と札幌市などとの往来が活発になっていた。確かに、このころに東京などの本州からの訪問者の感染確認が増えていた。

 第2波は、第1波よりも大きい波となった。1日当たりの新規感染者は最大45人(4月23日)となり、第1波の最多時の3倍。政府の緊急事態宣言の対象となっていた40日間の新規感染者数は累計740人余りで、第1波(北海道独自の緊急事態宣言の期間中)の7倍に達している。宣言期間も2倍に及んだ。

 さらに、第2波では、札幌圏の病院や福祉施設における大規模なクラスター(感染者集団)の発生も相次いだ。道内では、これまで21件のクラスターが発生しているが、このうち15件が4月の1カ月間に集中している。4月1日に42人だった入院患者数は、ピークとなる5月2日、12倍近い499人に達した。

 「最も恐れていた医療崩壊が、現実のものとなりつつあった」

 北海道保健福祉部の幹部は、このころの状況を、こう振り返る。

 北海道や市は、ホテルを軽症者療養施設にするなどして、感染者の病床確保に奔走していた。4月30日夜、鈴木知事は秋元克広・札幌市長とともに「道民は札幌に行かない!!」などとする緊急メッセージを出し、「札幌は日本の中でも極めて厳しい状況にあり、都市封鎖に相当する行動自粛が求められる」と訴えた。

 5月の下旬になると、やっと長期の外出自粛などの効果が出始めた。一日の新規感染者は10人以下に収まるようになった。政府が25日に緊急事態宣言を全面解除したのに続き、道は6月1日から独自の休業要請も全面解除に踏み切った。

 鈴木知事は9日の会見で「第2波は収束に向かいつつある」と述べ、一時の危機的状況は回避されたとの見解を示した。ただ6月以降、新規感染者がゼロになった日は一日もない。札幌市などでは依然、クラスターも発生している。

 ウイルスに感染してから発症し、さらにPCR検査で感染が確認できるようになるまでにはタイムラグがある。北海道の休業要請が全面解除されてからの状況が数字として表れてくるのは14日以降とみられる。

 北海道医療大の塚本容子教授(公衆衛生学)は「14日以降の数字を見てみないことには、安心できる状況になったと断言できない。道民には引き続き慎重な対応が求められる」と話し、注意を呼びかけている。

     ◇

 新型コロナウイルスに詳しい當瀬(とうせ)規嗣・札幌医科大教授(細胞生理学)の話

 北海道は感染「第2波」が依然と続いているものの、感染経路不明の感染者数は少なく、市中感染は抑えられている。小康状態にあると言える。

 感染の落ち着き度合いが予想以上に遅いが、昼カラオケなど知人同士が顔を合わせる場所でクラスターが発生している状況をふまえれば、そういう場所で油断が生じているのではないか。気心が知れた人との触れ合いの場でも、不特定多数が集まる場所と同様に注意を払う必要がある。

 世界的に見れば、東南アジアや南米などで感染が急速に広がっている。夏は流行は起きないというのは科学的根拠が薄い。暑くなったからと言って、油断は絶対に禁物だ。

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