米、低成長続く懸念 未曽有の対策、格差広げるおそれ

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ワシントン=青山直篤
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 米連邦準備制度理事会(FRB)は10日、コロナ危機後のゼロ金利政策を少なくとも2022年末まで続ける方針を示した。深刻な雇用危機とは裏腹に、金融緩和で株価は急回復したが、格差を広げ、成長力を弱めかねないジレンマをはらむ。米国でも低金利・低インフレ・低成長の「日本化」が長引く懸念が強まってきた。

 FRBは10日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、3月から続ける政策金利の誘導目標「0%~0・25%」の維持を決めた。パウエル議長は記者会見で、22年末まで利上げしないとの見通しについて、FOMC参加者の間で「圧倒的だ」と述べ、「利上げについて考えることすら考えていない」と強調した。

 FOMC参加者の予測によると、4月に戦後最悪の14・7%、5月も13・3%だった米失業率は米大統領選を挟む20年10~12月期も平均9・3%と、2008年のリーマン・ショック後の最悪期に近い高水準だ。

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 経済活動は徐々に再開しているが、客数を絞った非効率な営業や貿易の混乱などで供給面が阻害され、財政赤字も歴史的な規模にふくれあがる。これらはインフレを強める要因だが、FRBの予測では、22年10~12月期でも物価上昇は目標2%に満たない前年同期比1・7%にとどまる。リーマン後のゼロ金利政策は7年間に及んだが、今回の景気後退局面でも、23年以降も長期にわたって続く可能性がある。

 10日のFOMCでは、金融市場の安定化を図るため米国債などの資産を無制限で買い入れる量的緩和についても、「今後数カ月間、少なくとも現在のペースで資産拡大を続ける」ことを決め、声明に明記した。

 3月に無制限の量的緩和の方針を示した後、徐々に1日あたりの買い入れ額を減らしてきたが、当面はこの減額を止め、現状の買い入れペースを保つ。その後、「数カ月」をめどに、FRBは次の段階として、景気刺激に軸足を移した新たな量的緩和に踏み込む方向だ。

 それ以上は下げられないゼロ金利という「制約」に直面し、国民のインフレ予想も上向かず、金融政策の効果が限られる――。この「日本化」のシナリオは、コロナ危機の前からインフレ目標を十分に達成できていなかった米国で、パウエル氏らFRB高官がかねて恐れてきたものだった。

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