戦争、被害も協力も 本願寺派、全国1万寺に初の調査

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編集委員・伊藤智章
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 浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺)が、宗門の約1万寺を対象に、戦争に関する調査を進めている。住職の世帯と門徒らの戦没者数や空襲被害、金属の供出、戦争協力まで、戦後75年にあたり幅広く調べる。同派による全国規模の調査は初めてという。

 同派は日本最大級の教団の一つ。協力、被害ともに戦争との関わりの全体像はわかっていない。記録や写真の提供も呼びかけ、9月にも一部の結果を公表。その後も資料収集などを続ける。

 4月21日付で「宗門寺院と戦争・平和問題」の調査票を発送した。質問は50項目。戊辰戦争から日清、日露、第1次世界大戦までの質問もあるが、1931年の満州事変以降の「昭和の戦争」に43項目を充てた。

 各寺がどう戦争と関わったのか。住職の世帯で軍に入った人がいるか、志願か徴兵か、戦没したか、布教や弔いをする従軍僧を出したか、さらに門徒の戦没者数などの人的な関わりのほか、堂宇の空襲被害、学童疎開の受け入れ、本土決戦用に軍に接収されたか、戦後に戦争孤児施設を開いたかなど、施設や拠点としての戦争との関わりも聞く。

 40年の「紀元2600年」にあわせて記念碑などを建てたか、国家を挙げた戦争協力体制に同派も加わった過去をいま認識しているかを聞く質問もある。81年以降に同派が東京・千鳥ケ淵で続ける全戦没者追悼法要への参列、独自の追悼法要の有無など、現在の活動も尋ねている。

 同派の総合研究所(京都市下京区)に戦時調査室を設置。新型コロナウイルスの影響で作業は遅れ気味だが、全国から回答や関連資料が続々と届いている。

 同研究所の戦時被災等調査委員会委員の新田光子・龍谷大名誉教授(社会学)は「戦争体験者が少なくなるなか、歴史的、客観的な事実を記録にとどめ、継承していきたい」と話す。(編集委員・伊藤智章)

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