簡単に使い捨て「ハケンって何?」 声上げた売り場通訳

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斎藤徹
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 「派遣労働者がこんなに弱くて、軽く扱われる身分だということを実感した」

 北海道の30代女性は4月、2年間にわたり働いてきた職場を去った。大手百貨店が100%出資する人材派遣会社に登録し、札幌市内の大手デパートの化粧品売り場で働いていた。4月いっぱいで契約は満了し、その後は更新されなかった。いわゆる「雇い止め」だ。

観光客消え 通訳の仕事も消えた

 得意の中国語をいかしたいと、2018年4月から働き始めた。外国人専用の化粧品売り場で、メーカー社員と中国人買い物客との通訳を担当した。本来業務以外にも、接客や販促、会計などをこなし、中国の旧正月の春節(1月25日)など忙しい時には、1日で150人近くの外国人と接し、50万円を売り上げたこともある。派遣先の売り上げにも、日中友好にも貢献できていると、やりがいを感じていた。

 状況が変わったのは1月下旬。新型コロナの感染拡大で、中国からの海外渡航が制限されるようになり、売り場から外国人の姿が消えた。

 3月には勤務日数が減らされた。5月からは市内の別会社の売り場へ派遣される予定だったが、北海道が2月28日に独自の緊急事態宣言を出したことを理由に白紙となった。

 先が見えない不安で胃が痛む日々を過ごしていた4月中旬、派遣会社から「月末での契約満了」との通知が来た。2年間、おおむね3カ月ごとに計10回の契約更新を重ねてきた会社からの、事実上の解雇通知だった。

 女性は最後の勤務を終えた4月中旬、派遣先の上司から言われた言葉が忘れられない。「コロナが収束してお客さんが戻ってきたら、また来て下さい」。善意の言葉なのかもしれないが、ショックだった。

 女性によると、同じ派遣先で働いていた約20人の派遣労働者も4~5月、同じように雇い止めの通知を受けた。中国人留学生やシングルマザーもいるという。同じ職場の正社員が解雇されることはなかった。

 お客さんが減ったら簡単に使い捨てにされるハケンって何?――。

 納得がいかず、個人でも加入…

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