虎ノ門ヒルズ駅、静かに開業 潜在能力に高まる期待 

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一條優太
【動画】東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ」が開業=林敏行撮影
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 東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ」(東京都港区)が6日、開業した。日比谷線の新駅は、全線開通した1964年以来56年ぶり。新駅には、急速に再開発が進む一帯の「交通の結節点」としての役割が期待される。

 午前9時半過ぎ、この日から運行が始まった東武線と直通する座席指定列車「THライナー」が虎ノ門ヒルズ駅に到着すると、鉄道ファンらがシャッターを切った。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、新駅開業の際に恒例となっている出発式はなく、静かな「船出」となった。

 都心部では、3月に開業したJR山手線京浜東北線高輪ゲートウェイ駅に続く新駅。東京メトロ銀座線の虎ノ門駅とも地下通路でつながり、約7分で乗り換えられる。霞が関の官庁街からも近い。

 新駅から隣の神谷町駅まではわずか約500メートル。反対側の霞ケ関駅も約800メートルと、いずれも徒歩数分から10分ほどで行き来できる。この場所に新駅を造ったのにはわけがある。

 新駅の計画は、建設の主体の都市再生機構(UR)と工事を担う東京メトロが2014年10月に発表し、16年2月に着工した。多くの訪日客を見込んでいた今夏の東京五輪パラリンピック開幕に間に合わせるという目標に向け、4年余りで開業にこぎつけた。

「大手町に近いのに…」

 森ビルは周辺に「虎ノ門ヒルズ」の名を冠した超高層ビルを次々に計画。14年には地上52階、高さ247メートルの「森タワー」、今年1月にはオフィスビル「ビジネスタワー」が完成した。

 さらに、21年には富裕層の外国人の入居などを当て込んだ住居用ビルを1棟、23年には高さ約265メートルのビル1棟を建てる予定もある。すべて完成すると、虎ノ門ヒルズのビル群の延べ床面積は、東京ドーム17個分の80万平方メートルに広がる。

 虎ノ門周辺の再開発事業はこれだけではない。今年3月には森トラストが手がけた大規模複合ビル「神谷町トラストタワー」が完成。虎の門病院の建て替えを中心とした再開発事業もあり、同病院は昨年5月に新たな建物に移った。

 URの担当者は「虎ノ門は大手町や丸の内に近く、(開発の)潜在能力があるのに、高度利用されていなかった。今後は地下鉄駅の需要が増える」と見込む。

 新駅に森ビルが期待するのは、「交通の結節点になる」(広報担当者)という役割だ。駅に隣り合うビジネスタワーの1階には、空港リムジンバスが発着できるバスターミナルが入った。晴海など臨海部と、バス高速輸送システム(BRT)で結ぶ予定もある。14年に新橋と虎ノ門の間が開通した環状2号線と合わせ、周辺の利便性は向上しつつある。

 一方で新型コロナはここでも影を落としている。五輪の1年延期が決まり、5月に予定されていたBRTのプレ運行も延期となった。企業のテレワークが浸透し、オフィスビル需要の見通しも不透明さを増している。URは13年にまとめた調査報告書で、新駅の乗降客数を1日約8万人と見込んでいた。再開発はその後一層進んだが、新型コロナの影響もあり、「現在は精査中」だという。

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