窓の向こうに、高いフェンスが立ちはだかる。外の世界で見えるのは、林と空だけだ。

 地方のある少年院。トイレ付きの3畳一間の個室で、丸刈りの子どもたちが鉛筆を手に原稿用紙に向かっていた。法務教官の男性が廊下から小窓をのぞいて見守る。30代でこの仕事に就き、5年目を迎えた。

 作文のテーマは「償いとは何か」。教官は自分の机に戻り、回収した1枚ずつに目を通した。「親に弁償してもらう」「ちゃんと謝る」。まだ、この子には難しかったかな。一人ひとりに感想を書いていくと、赤いボールペンは3週間もすれば、インクがなくなる。

 《償いは一朝一夕で終わりません。謝ったからといって社会への償いは終わりではないのです》

 そして、書きながら思う。俺の償いも、まだ終わっていないんだよな。

 中学時代、けんかに明け暮れた…

この記事は有料記事です。残り780文字
ベーシックコース会員は会員記事が月50本まで読めます
続きを読む
現在までの記事閲覧数はお客様サポートで確認できます
この記事は有料記事です。残り780文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料記事です。残り780文字有料会員になると続きをお読みいただけます。