記事化を知らずに亡くなった男性 コロナで一変した別れ

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東京社会部・新屋絵理
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取材考記

 ふるさと岩手県の実家から、祖母が末期の糖尿病で入院したと連絡があったのは、2016年12月だった。余命約1カ月なのだという。仕事を同僚に頼んで、10日間の冬休みの全てを使って朝から晩まで付き添った。

 祖母は好物のカニを一口食べて「うんめえな」と笑顔を見せた。が、眠る時間が増えていった。痩せたほおを触り、頭をなでた。こんなに白髪があったんだと初めて気づき、もっとおばあちゃん孝行をすればよかったと悔やみ、砂時計のように減っていく時間をそばで過ごした。私にとって大事な最後の思い出だ。

 新型コロナの感染拡大は、そうした別れの光景を一変させた。

 今年4月、1本のメールが社会部に届いた。差出人は、白血病で入院する栃木県の男性(57)だった。「新型コロナのため、病院では家族面会が禁止され、看取(みと)りもできないと言われた」。電話で連絡をとると、男性は「自分は在宅医療に切り替えるが、この状況を知ってほしい」と訴えた。

 家族のもどかしさ、本人の心細さ。医療従事者も含め、誰の心にもしこりが残るに違いない。患者の家族や医師の取材を進めて10日後、記事のめどがたち、男性に報告の電話をした。

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 だが、出ない。妻(56)と…

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