地震多発する上高地、落石・地割れで異様な風景に

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山岳専門記者・近藤幸夫 依光隆明
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 4月下旬から、北アルプス玄関口の上高地(長野県松本市)で続く群発地震が止まらない。間近にそびえる穂高連峰では大規模な雪崩や山崩れが発生したほか、遊歩道には落石や地割れが起きている。県の外出自粛要請が解除され、路線バスの運行も再開されたが、観光や山小屋の関係者らは警戒を強めている。

 「ゴーッ」。5月30日に取材のため訪れた上高地で、地鳴りのような音が響くと同時に体にはっきりわかる揺れを感じた。小梨平キャンプ場近くの遊歩道を歩いていた時のことだ。途中、直径10センチほどの落石がいくつも転がっていた。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月18日~5月15日、マイカー規制されている上高地への主要な移動手段である路線バスが運休。運行再開から2週間ほど過ぎたが、観光客や登山客はわずか。客足が戻らないのは、外出自粛ムードが続くほか、群発地震が響いたとみられる。

 5月29日午後7時過ぎ、上高地に近い松本市安曇で震度3を観測する地震が発生。上高地の観光関係者は「地震による衝撃で、土砂が火事の煙のように山全体で舞い上がった。穂高連峰では雪崩も多発した」。

 実際、観光名所の河童橋(かっぱばし)から望む穂高連峰の岳沢では何カ所も雪崩の跡が確認できた。近くの斜面では立ち木ごと崩落し、赤茶けた地肌がのぞいていた。明神岳の谷筋には落石の跡も目立つ。梓川左岸の遊歩道では落石や地割れが多発。通行自粛を呼びかける看板も設置されていた。

 バスターミナルで静岡県から来た若い男女の登山者に話を聞いた。前日、河童橋から徒歩2時間ほどの徳沢でテントを張ったところ「身の危険を感じるほどの揺れ」(女性)に襲われたという。穂高連峰の登山基地・涸沢(からさわ、約2300メートル)に行く予定を取りやめたと話していた。

 穂高連峰周辺の山小屋は、7月14日まで営業を休止中。北アルプス山小屋友交会会長で横尾山荘社長の山田直さんは「地震のため登山道が荒れ、雪崩の危険もある。登山は自粛してほしい」と呼びかける。

 梅雨入り前の上高地は、1年で最も美しいとされる新緑の季節を迎えている。だが、命を守るため、河童橋周辺の観光にとどめ、登山はもう少し我慢すべきだと強く感じた。(山岳専門記者・近藤幸夫)

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