東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの延期に戸惑うアスリートもいる中、体操の白井健三(日体大大学院)は「心の底から良かったと思える」と言い切る。19歳でリオデジャネイロ五輪男子団体金メダリストに。4年後のエース候補と期待されていたが、今、その立ち位置からは遠いところにいる。

 5月中旬、オンラインでの取材に応じた白井に「今年、五輪が開催されていたら代表になれたと思いますか」と尋ねた。質問し終わらないうちに、白井から「無理でした」という答えが返ってきた。

 4月に開かれるはずだった五輪代表選考を兼ねた全日本選手権。準備していたのはピーク時には遠く及ばない難度の低い演技だった。「95%は自分の演技に後悔しないことに比重を置いていた」。代表争いどころではなかった。

 直接的な原因は2度のけがだった。昨年2月に左足首を痛め、走れなくなった。2013年から続いた世界選手権代表の座を逃すと、8月には左肩を亜脱臼した。

 けがの他にも誤算はあった。昨春、日体大を卒業すると大学院に進んだ。東京五輪まで練習環境を変えないためだった。だが、狙いどおりにいかなかった。「今この練習をしたら後輩の邪魔にならないかな」「後回しにしよう」。後輩たちを気遣っているうちに、思うように練習ができなくなっていた。畠田好章監督から「遠慮しなくていい。自分次第だよ」と言われたが、変われなかった。

 日本のトップ選手が集まる強化合宿があると、「日体大で思うように練習できない分、今やらなきゃ」と無理をした。左肩の亜脱臼は合宿中、鉄棒で落ちて違和感を覚えたあとも練習を続けたことが原因だった。

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