がん治療遺伝子「運び役」を新開発 3年後の治験めざす

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小出大貴
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 東芝と信州大学は、がんを治すための「治療遺伝子」を極小の人工カプセルに入れて、がん細胞内に効率よく送り込む技術を開発したと発表した。遺伝子治療の一種で、無毒化したウイルスを使って運ぶ従来の手法よりも安全性が高まると期待される。13日に米国遺伝子細胞治療学会で発表した。3年以内の治験開始を目指す。

1万分の1ミリの極小カプセル

 がんの遺伝子治療は、手術、抗がん剤、放射線に続く治療法として注目される。がん化した細胞の遺伝子を正常に戻すことができる治療遺伝子をがん細胞内に送り込む。

 東芝と信州大が開発した「がん指向性リポソーム技術」は、「ベクター」と呼ばれる、がん細胞までの治療遺伝子の運び役に脂質でできた人工の極小カプセル「リポソーム」を用いる。リポソームは、大きさ約100ナノメートル(1万分の1ミリ)と小さく、薬などを患部に効率よく運ぶ手段として期待されている。

 東芝では、材料研究の一環として脂質に着目。成果を応用して5年ほど前から遺伝子治療に使う技術を研究してきた。実験では、がんの一種であるT細胞白血病の細胞を持たせたマウスに投与。リポソームの主成分となる6種の脂質の配合割合を変えることで、がん細胞に取り込まれやすくすることに成功したという。正常な細胞に比べ33倍の量のリポソームががん細胞に吸収された。

 がんの遺伝子治療をめぐっては、欧米ではすでに複数の治療法が承認を受けた。国内でも昨年5月、白血病向けの「CAR(カー)―T細胞療法」の製剤「キムリア」が公的医療保険の適用対象になった。

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 これらは一般的にベクターに…

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