賭けマージャン問題、密着と癒着の線引きは 池上彰さん

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 この原稿を書くのは、なんとも気の重いことです。東京高検の黒川弘務検事長と産経新聞の記者2人、それに朝日新聞の社員が、緊急事態宣言中に賭けマージャンをしていたというニュースです。このニュースを知ったとき、私の頭の中にはいくつもの感情が渦巻きました。

 朝日と産経は社としては犬猿の仲だけど、現場レベルでは親しい関係を持っている人がいるんだ。

 黒川検事長という時の人に、ここまで食い込んでいる記者がいることには感服してしまう。自分が現役の記者時代、とてもこんな取材はできなかったなあ。

 朝日の社員は、検察庁の担当を外れても、当時の取材相手と友人関係を保てているということだろう。記者はこうありたいものだ。

 でも、いくら何でも賭けマージャンはまずいだろう。しかも、「週刊文春」にすっぱ抜かれたのだから間抜けなことだ。なんで新聞社が、こういう記事を書けないんだ……。

 私もかつてNHK社会部の記者でした。警視庁を2年間担当し、捜査1課の幹部から一線の刑事たちまで、多くの人たちから情報を得ようと必死な時代がありました。結局たいした特ダネも書けないまま警視庁担当を外れました。

 いまでも時折、あの頃のことを思い出し、自分のふがいなさに情けなくなります。後輩たちに偉そうなことは言えません。

 しかし、このとき上司から言われたことは忘れられません。記者の心得として、「密着すれど癒着せず」という言葉でした。

 取材相手に密着しなければ、情報は得られない。でも、記者として癒着はいけない。この言葉を肝に銘じて……と言うと優等生のようですが、密着することができなかった自分の能力不足を棚に上げて、「癒着はダメだから」と自分をだましていたようにも思えてしまいます。

 今回の出来事を、どう考えればいいのか。

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 悩みながら新聞各紙を読んで…

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