コロナ危機、進化の幻想を打ち砕いた SF作家・劉慈欣

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聞き手 中国総局長・西村大輔
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 新型コロナウイルスは現代社会に何をもたらしたのか。未知の脅威に直面した人類は、危機にいかに立ち向かうべきか。地球外文明からの侵略をテーマに描いたSF小説「三体」で世界的に注目される中国の作家、劉慈欣さんがビデオ通話でインタビューに応じ、文明間の対立を避ける新たな仕組みが必要だと提起した。

 ――もし「未知のウイルス」をテーマに小説を書くとしたらどんな結末にしますか。

 「歴史上、いかなるウイルスも人類を滅ぼすことはできませんでした。ウイルスは本来、人を殺すことを目的にはしていません。人類との共存を望んでいるはず。宿主が死んでしまったら、自らも生きていけないからです。別の星が衝突したり、宇宙人が侵略に来たりしたら、我々は自らの能力では対応できません。しかし、ウイルスはそもそも我々の体内にあるもので、人類の技術力、対応力で克服できる可能性があります。小説を書くなら、最終的に人類が疫病に打ち勝ち、生き抜いていく楽観的なストーリーにしたいですね」

 ――「三体」などあなたの作品では、人類が力を合わせて危機を乗り越えます。でも現実は、トランプ米政権が中国を批判するなど団結にはほど遠い状況です。

 「SF作家は、人類が巨大な災難に直面する物語をよく描きます。人類が団結して立ち向かうパターンもあれば、分裂してしまうパターンもありえます。団結してこそ災難を克服できると信じますが、現実を見る限りそうなる可能性は高くないようです」

 「今回の疫病は、経済への打撃もさることながら、政治的な影響が大きいと思います。中国と西側諸国との間の矛盾や衝突は冷戦後では最悪です。政府間だけでなく、大衆レベルでも無理解、敵意が深刻になっています。さらに、各国の内部でも分断が深刻化しています。歴史的に見ても人類が団結したことはなく、異なる陣営に分かれてきました。冷静に見れば、それが人間社会の本質なのかもしれません」

 ――どうすれば危機を乗り越えられるのでしょうか。

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 「現実を直視し、各国が団結…

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