場当たりな人気より、データ基づく日常を 宮田裕章氏

有料記事コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線

聞き手・松山尚幹
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 首相官邸主導で決まった一斉休校や布マスクの配布。政府の新型コロナウイルス対応を取材すると、政策の根拠が不透明だと感じることが多い。一方で、LINEを使った健康調査や、携帯電話の位置情報による人出の調査など新たな手法を駆使する場面も増えた。政治は多種多様なデータとどう向き合うべきなのか。LINE調査に携わる慶応大医学部の宮田裕章教授(医療政策)に聞いた。(聞き手・松山尚幹)

略歴|宮田裕章教授

みやた・ひろあき 1978年生まれ。データサイエンスや医療政策が専門。厚生労働省の有識者検討会メンバーなどを歴任。

未来は、そのままやってこない

 科学を使って世の中をより良くするため、ビッグデータやテクノロジーを使うことが増えています。新型コロナ対応では、限られた陽性者のデータだけを見ていると、感染が拡大した時に対応が難しくなる。そう考えて、厚生労働省クラスター対策班の西浦博北海道大教授とも話し、LINEと連携した全国調査でデータを集め、分析しました。

 初期の調査で明らかになったのは、対人接触を伴うサービス業や外回り営業を続けると、感染を広げるリスクになることです。そうした業種の人たちの命を守り、感染拡大を防ぐため、データを元にリスク管理の必要性を示しました。これは緊急事態宣言の解除後も重要です。

 新型コロナ対応で対策を誤れば、すごい速さで現実に跳ね返ります。各国で明暗が分かれ、政治のあり方にも影響を与えています。

 好事例はドイツメルケル首相です。科学者でもある彼女は数字の意味を明確に理解し、科学的根拠に基づいて政治家としての言葉で説明しました。「我々は民主国家だ。プロセスは透明にしてみんなで戦う」と国民に姿勢を示し、支持を得たのです。

 一方で、課題があるのが米国のトランプ大統領です。SNSなどを使い、注目は集めやすいが科学的根拠のない政策を示しても、即座にそれが有効でないことが示されてしまう。場当たり的な人気取りより、根拠に基づいた成果で評価を受ける「エビデンス・ベースド・ポリシー」の時代が、ここから始まっていくかもしれません。

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 新型コロナは簡単には終わら…

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