マイナンバーと預貯金口座のひもづけ なんのため?

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編集委員・伊藤裕香子
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 国民一人ひとりが持つ12けたのマイナンバーを、金融機関の預貯金口座と結びつける動きが進もうとしている。一律10万円の給付金の手続きに手間取り、支給が遅れる事例も散見されるなか、政府・自民党は「国民の強いニーズ」があるからだと説明する。でも、どこかしっくりこない。

事前登録で即座に入金

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて給付される10万円では、世帯主が振り込みを希望する口座番号に通帳などの写真やコピーをつけて、申請する。市区町村は間違いがないかを一つずつ確認するため、支給に時間がかかる一つの要因となっている。

 安倍晋三首相は「スピードを重視する」と言っていたのに、10万円はなかなか届かない。ならば振り込み用口座を事前に登録しておけば、国民も市区町村側も手間が省けて早く現金が届く――。そんな発想から政府・自民党が考えているのが、本人の同意をもとにマイナンバーと口座情報を結びつけるシステムだ。

 政府は今回、市区町村に集まった名前、住所、口座の情報をすぐに破棄させず、有効利用したい考えだ。国民はインターネット上のマイナポータルに口座番号を登録し、税金の還付や年金の受取口座も同じように扱えるようにするという。あくまでも本人の同意が前提だが、より多くの人に広まれば、将来は個人単位での給付もすぐできるとみる。

 「利便性をあげておく仕組みが必要との声は高まっている」「国民から強いニーズがある」「国民の理解を得られる」

 この方針を自民党の提言に盛り込んだマイナンバープロジェクトチームの新藤義孝座長(元総務相)は、すみやかな給付を求める国民の声が口座連携の根拠にあることを、繰り返し強調した。高市早苗総務相も「検討の流れを歓迎」「非常に有意義」と同調する。

 ただ、システムの構築は法改正後1年ほどかかるとの見方もある。今回の10万円給付では、水道料や住民税の支払い、児童手当の受け取りなど、市区町村が把握する口座を使う場合は写しの添付がなくてよいところもある。「次の給付」の時期によっては、これに準じた形での運用もありそうだ。

番号は何のために

 そもそも、なぜ私たちには、一つずつの番号があるのか。マイナンバーの検討が始まったのは、もう10年以上も前のことだ。

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