米中対立、ワクチン開発の国際協調にも影 WHO舞台 

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ワシントン=渡辺丘 北京=冨名腰隆 ワシントン=香取啓介
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 新型コロナウイルス対策を焦点にして世界保健機関(WHO)が年次総会を開くなか、米国と中国が激しく対立した。トランプ米大統領はWHOからの脱退まで示唆し始めた。米中対立は、ワクチン開発や供給に関する国際協力にも影響しかねない状況だ。

トランプ大統領「WHOは中国の操り人形

 「WHOが前に進む唯一の方法は、中国からの独立を実際に示せるかにかかっている」

 トランプ氏は18日、WHOのテドロス事務局長への書簡を公開し、中国との関係を改めて批判。拠出金の恒久的な停止と、WHOからの脱退まで示唆した。

 新型コロナをめぐって米中の対立が深まるなか、WHOの年次総会での対立は以前から懸念されていた。しかし、米国から出席したアザール厚生長官は「WHOは世界が必要とする情報を得ることに失敗し、そのせいで多くの人が命を落とした」と述べつつも、中国の名指しは避けていた。背景には、中国が難色を示してきた、パンデミックをめぐる独立調査に向けて各国の支持を集める狙いなどがあったとみられる。

 米ニュースサイトのアクシオスによると、トランプ氏もWHOから演説するよう招待されたが、断ったという。このため、書簡は国際社会へのメッセージより、国内の批判をかわす目的の可能性がある。書簡で展開した、「1月に中国の『透明性』を称賛した」といったWHO批判にも矛盾もある。トランプ氏も同じ時期、「中国の努力と透明性に大変感謝する」とツイートし、米国も中国側からウイルスに関する情報提供を受けているためだ。

 ただ、トランプ氏のWHO・中国バッシングは止まらない。書簡公表に先立って記者団には「WHOは中国の操り人形だ」と発言。「中国(の拠出金)は昨年4千万ドルだったが、米国は年間4億5千万ドルを払ってきた。4千万ドルに減らそうと考えていたが、それでも多すぎるという人もいる」と語った。(ワシントン=渡辺丘)

習近平国家主席「WHO、多大な貢献」

 中国外務省の趙立堅副報道局長は19日の定例会見で、トランプ氏の公開書簡について「中国に汚名を着せて米国の感染対応のまずさを隠す狙いだろうが、徒労だ。米国の政治家は責任を押しつけるのをやめるべきだ」と反論した。

 WHO改革を求めるトランプ政権に対し、中国は正反対の立場を強めている。

 習近平(シーチンピン)国家主席は18日のWHO総会の演説で「テドロス事務局長のリーダーシップの下、WHOは感染拡大阻止に多大な貢献をし国際社会が高く評価している」と称賛。新型コロナ対応でWHOが権限と資金をさらに集中して指導的役割を果たすべきだと訴えた。

 米国が問題視する「透明性」についても、習氏は「中国は常に公開、透明、責任ある態度で情報をWHOや関係国に伝えてきた」と主張。政治色を帯びた調査ではなく、科学者によるウイルス発生源や感染経路の研究であれば協力するとした。

 ただ、米国が資金拠出を停止する展開には懸念を抱く。中国国連協会の張丹副会長は、中国メディアに「米国の支援が止まっても一定の調整は働く」と楽観論を示したが、中国外交筋は「いくつかのプロジェクトは止まる。中国に肩代わりする力はまだない」と認める。

 新型コロナをめぐる米中の非難合戦で、中国はポンペオ国務長官を「人類共通の敵」(国営メディア)と名指しで責めるが、トランプ氏への批判は控えている。中国外交筋は「トランプ氏はしょせん選挙ファースト。明日、突然『中国は友人』と言うかもしれない。振り回される必要はない」とし、挑発に乗るのはこの先の対米関係の面でも国際社会からの評価の面でも得策ではないとの姿勢を示す。(北京=冨名腰隆

治療薬の開発にも懸念

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 米中の対立は、新型コロナの…

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