やまぬ感染者への中傷、松本清張「砂の器」が問う人の闇

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岩井建樹
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 かつて日本では90年近くもの間、ハンセン病患者への隔離政策が行われた。治療法が確立し、差別的な法が廃止された後も、人々の中にすり込まれた忌避感は残り、患者や家族の苦しみは続いた。今、コロナ禍のニッポンでも感染者や医療従事者らへの中傷が問題になっている。人はなぜ他者を差別し、排除しようとしてしまうのか。そんな問いを突きつける一冊がある。

 終戦を境に、日本は社会制度のみならず、人々の価値観が大きく変わった。だが戦後も変わらず、続いたものがある。松本清張の小説『砂の器』(1961年刊行)は、戦前から続く差別という闇を浮かび上がらせた。

 物語では、身元不明の他殺体が発見される。捜査は難航したが、ある人物にたどり着く。著名な若手作曲家、和賀英良(わがえいりょう)。彼には秘密があった。父親がハンセン病だったのだ。和賀は戸籍を捏造(ねつぞう)し、療養所に隔離された父親と縁を切り、別人として生きていた。ある日、過去を知る恩人の突然の訪問を受ける。和賀は秘密の暴露を恐れ、恩人を殺す。

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 「戦前から続くハンセン病へ…

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