新型コロナウイルス対策で、障害者入所施設では緊張の日々が続いている。大きな影響を与えたのが、千葉県東庄(とうのしょう)町の障害者入所施設「北総育成園」で3月に発生した集団感染。収束に向かいつつあるが、他の施設は「ひとごとではない」との危機感で備えを進める。緊急事態宣言が解除された地域でも同様だ。だが、感染者が出た時の人手や防護用品の確保など課題は多い。

宣言解除後も対策継続

 群馬県は5月14日に緊急事態宣言が解除された。「国立のぞみの園」(同県高崎市)は15日、感染症対策委員会を開き、2月から進めている利用者や職員らのマスク着用などの感染予防策や、3月に強化策として始めた保護者らの利用者への面会の原則禁止を継続することを決めた。

 利用者約200人のうち、60歳以上は約7割に上り、「最期までここで」とついのすみかとして暮らす人も少なくない。「高齢者や基礎疾患のある人が多く、感染リスクは高い。職員も何かあったらという緊張感を持ち続けている」と、小林隆裕施設事業局長(60)は話す。

拡大する写真・図版国立のぞみの園では現在、利用者向け映画鑑賞などのイベントは中止、保護者の面会も原則禁止だという=国立のぞみの園のホームページから

 4月に策定したマニュアルにそった備えも継続する考えだ。マニュアルでは、利用者が感染した場合、まず、医療機関に入院の受け入れを依頼。ただ、満床だったり、利用者がいつもと違う環境になじめず治療が困難になったりすることも想定し、園内での隔離策に重点を置く。

 隔離する場所は、今使われていない別棟で、七つの個室を「病室」として利用。食事は原則個室でとる▽トイレは、病状や障害特性に応じてできるだけ個室でポータブルトイレを使い、共用トイレへ移動する負担を軽くする▽清拭(せいしき)で使用したタオルは熱水で洗浄後乾燥する――など、きめ細かく対応を決めている。

 感染者の介護には入所部門以外の管理職らが応援に入り、看護は園内にある診療所の医師の指示を受けた看護師が担う。だが、「もし集団感染が起きたら、対応には限界がある」(同局長)。課題を抱えつつも、利用者に欠かせない生活の場を守るための試行錯誤を続けている。

3密 「そもそも避けるのが難しい」

 「うちの施設でも感染者が出ないかと職員は緊張の毎日。千葉の集団感染はひとごとではありません」

 大阪府高槻市の障害者入所施設「萩の杜(もり)」の勝部真一郎施設長(44)は話す。

 施設には、重い知的障害のある…

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