彼は1990年代のはじめ、映画の都ハリウッドに突如現れ、有名監督の仲間入りを果たした。ご存じ、クエンティン・タランティーノである。
妄想全開のだべりから一転…
彼が最初に世に送り出した作品が「レザボア・ドッグス」。監督人生を決定づけた本作は、黒いスーツの男たちがダイナーのテーブルを囲んでたわいのない話を延々と続ける場面から始まる。マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」について妄想全開で語り、チップを払うか否かをめぐってののしり合う。だべること8分ほど。無駄話で映画はいきなり大渋滞をきたす。
何てゆるい映画なんだと思っていたら、闊歩(かっぽ)する登場人物たちをスローモーションで捉えたオープニングをはさんで、急転。今度は車の後部座席で血まみれになってわめく人物が映り、一気に物語は加速。この見事な転調と時制を組み替えた構造、ラジオから流れる小粋なオールディーズ曲も新しかった。分類すれば犯罪映画だが、その言葉に収まらない細部がクールに見えた。
ここから続き
監督の経歴が完全なるインデ…
【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら