第4回南伊豆に杉並区の特養施設 ウィンウィン計画に思わぬ壁

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上田学
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 慣れ親しんだ都内を離れて、高齢者に地方へ移り住んでもらう。これは本人にとっても、都会の自治体にとっても望ましい「ウィンウィン関係」なのか――。区役所から200キロ余り離れた場所に、東京都杉並区が建てた特別養護老人ホームを、記者が今年2月に訪ねた。

 高齢者の急激な増加により、受け入れ施設が足りない。新しく建設したくても地価の高騰に阻まれる。そんな悩みを持つ都心の自治体の一つ、杉並区が静岡県南伊豆町に特別養護老人ホームを建設したのは、一昨年のことだ。

 都道府県の境を越え、自治体が共同で整備した全国初の「区域外特養」である。膨れあがる都心の高齢者を地方に送り出すという「妙手」が全国の自治体に注目された。

 杉並区から車で4時間近く、伊豆半島の南端に南伊豆町はある。

 町役場の近くに立つ特養「エクレシア南伊豆」は3階建てのモダンなデザインで、内部には木材が多く使われている。入所者と面会する家族のための宿泊室も備えている。

 個室で過ごしていた淡路米子さん(90)は、開所した2018年3月に杉並区民として入所した。

 「食事もおいしいし、職員の方にもよくしてもらっている」。この施設を選んだ理由について「長男が調べてくれた」と言うが、入居するまで町には縁もゆかりもなかった。

都会で急増する高齢者を地方で受け入れる―。記事の後半では、ウィンウィンに見える計画の実態を追います。

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