おばけのマール、誕生15年 絵本から子どもにエール

斎藤徹
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 札幌生まれのご当地おばけ「マール」がたくさんの友だちとふれあう絵本シリーズが、今年で刊行15周年を迎えた。4月には最新作の10作目も登場。新型コロナウイルスの感染が収まらないなか、出版社はマールで心をいやしてほしいと、電子絵本の無料配信も始めた。

誕生のきっかけは、円山動物園の応援

 マールは札幌市中心部の円山のてっぺんに住む、人間なら3歳くらいの子どものおばけ。好奇心旺盛で、丸いものとブロッコリーが大好き。友だちをつくるのが得意だ。

 第1作「おばけのマールとまるやまどうぶつえん」は2005年12月、同市東区の中西出版から刊行された。当時、人気が下降気味だった円山動物園を応援しようと、札幌出身の絵本作家・けーたろうさんが札幌在住のイラストレーター・中井令さんに呼びかけて誕生した。

 シンプルながら表情豊かなかわいらしい外見と、札幌市民に身近な場所やイベントにまつわる物語が好評で、シリーズ化が決まった。以降、雪まつりや時計台、市青少年科学館、札幌交響楽団などをテーマに、マールが友だちと楽しく遊ぶ作品を紡いできた。

 けーたろうさんは「毎回楽しく作ってこられたことが、長く続いている理由だと思う。幼稚園のときに読んでいた子が大学生になって、子どもに読み聞かせをしてくれているのを聞くと感慨深い」と、15年を振り返る。

最新10作目「すてきなことば」 テーマはアイヌ

 4月には、北海道白老町にできるアイヌ文化復興・発展のための国立施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の開業に合わせ、10作目「おばけのマールとすてきなことば」を刊行した。ウポポイで北海道犬と出会ったマールが、けんかしたり仲直りしたりして、シマフクロウやキタキツネら友だちと踊ったり歌ったりする内容だ。文は「イランカラプテ」(こんにちは)「イヤイライケレ」(ありがとう)などやさしいアイヌ語で書かれている。

 だが、ウポポイは新型コロナウイルスの感染拡大で開業が延期になった。北海道は連日新しい感染者が出ており、感染が集中する札幌市内では、市民が現在も外出自粛や学校・公共施設の休業などで不自由な生活を余儀なくされている。

 こうした事態をふまえ、中西出版は5月いっぱい、電子書籍の既刊9作品を無料で読めるようにした「コロナに負けるな!! 頑張れ子どもたち応援キャンペーン」を展開している。さらにホームページ(http://www.ma-ru.jp/index.html別ウインドウで開きます)には、中井さんが書いたイラストを下地にしたぬりえやお絵かきができるページも作った。河西博嗣常務は「家に閉じこもりがちで親子関係もギスギスしがちだが、マールにふれて親子や家族同士、心をほっこりさせてもらえたら」と話す。

コロナ禍の子らを応援 「ぼくといっしょにあそぼうよ!」

 新型コロナ禍の今、マールはどうしているのだろうか。けーたろうさんは「絵本の中で、読んでいるみんなと一緒にいろんなところに出かけていると思う。言葉はまだうまく話せないだろうけれど、札幌のみんなに、エールを送っているはず」。

 マールは05年に亡くなった中井さんの母親が「札幌のためにできることをしなさい」と夢の中で語ったのがきっかけで生まれたという。中井さんは「今では自分の子どものように思っています。子どもたちや、子育てに頑張っているお母さんお父さんのために、これからも描き続けていきたい」と話している。(斎藤徹)

「おばけのマール」シリーズは定価1320円(税込み)。全国の書店で販売している。中西出版(011・785・0737)。「おばけのマール」は、新型コロナ禍で苦境に陥っている札幌交響楽団をクラウドファンディング(https://find-h.jp/project/sakkyo2020/detail別ウインドウで開きます)で支援する活動もしている。

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