10億人追う中国式カメラ 米国ピリピリ、日本の戦略は

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ナイロビ=奥寺淳 ジブチ=武石英史郎 編集委員・峯村健司 染田屋竜太 貝瀬秋彦=バンコク 奈良部健 編集委員・佐藤武嗣
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 ケニアの首都ナイロビ。中心部にあるケニア国立文書館前の広場は、夕刻になると、バスを待つ人、若者のカップル、仕事を終えた人たちでごった返す。

 ふと見上げると、キノコ形をした監視カメラが人々を見渡していた。カメラには「HUAWEI」というロゴが見えた。

 広場から約500メートル離れたケニヤッタ国際会議場。安倍晋三首相は4年前、日本が主導したアフリカ開発会議(TICAD)に臨み、中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗するための外交方針「自由で開かれたインド太平洋」戦略を打ち出した。しかし今、その会場近くにも中国のデジタル覇権の影が迫る。

 中国の通信機器大手、華為技術ファーウェイ)はケニア政府の発注で、2015年から監視カメラを設置。「セーフシティー」と呼ばれるシステムが街のあらゆる交差点に整備され、ナイロビとモンバサの2大都市で約1800個のカメラが市民を追う。映像は治安機関のデータセンターに集められ、治安対策に加え、渋滞緩和にも役立てられるという。

 3月には新型コロナウイルス感染対策夜間外出禁止令が出て、帰宅を急ぐ市民がフェリー港に殺到。混乱を収めるため、治安部隊催涙弾を浴びせた。人々が逃げまどう道にも監視カメラは設置されていた。

 ケニアではショッピングモールや大学などが狙われるテロ事件が相次ぎ、「治安が良くなるなら、監視カメラは問題ない」という空気が強い。タクシー運転手のジシンジ・シモンさん(68)は「自分は悪いことはしていないから監視カメラは気にならない。それより犯罪の強い抑止力になる」と歓迎する。

 治安に課題を抱え、強権的な体制も多いアフリカでは中国の監視システムへの抵抗は薄い。セーフシティーは、中国を含めアフリカやアジアなど約90カ国、230を超す都市で導入され、10億人の姿をカメラが追う。

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