発音練習・チャット回答… オンライン授業、工夫と限界

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柏木友紀 山田暢史 宮坂麻子 聞き手・宮坂麻子
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 今月末まで緊急事態が延長され、休校が続く首都圏。各地の学校で、教師たちがオンライン授業に奮闘中だ。少しでもより良い学びを届けたいと模索し、校長が自ら教える学校も出てきている。(柏木友紀、山田暢史、宮坂麻子

「挙手、実際のクラスより恥ずかしくない」

 4月下旬、北鎌倉女子学園(神奈川県鎌倉市)。中1の英語の授業が始まると、約30人の生徒の顔が次々とテレビ会議システム「Zoom(ズーム)」の画面に映し出された。直接お互いに顔を合わせたのは、同7日の入学式での1時間余りだけ。その場で各自がiPadを受け取り、翌日からオンラインで使い方を学びながら、双方向型で授業を受けている。

 この日の授業のテーマは、英語での自己紹介。先生の後について、生徒たちが声に出して練習する。先生が1人を指名すると、指された生徒はマイクをオンにして答える。板書が画面に映し出され、授業後に全員に共有される。「一つ目の文が、よく分かりませんでした」。時折、生徒から質問が入る。「実際のクラスより、手を挙げるのが恥ずかしくない」「家なので、リラックスして取り組めます」という声も。

 「ノートは見開きで使い、英語を左側のページに、日本語訳を右側に書きましょう」。この日の宿題は、自分のプロフィルを英語と日本語でノートに書き込み、写真に撮ってメールに添付して送る。教師が後で、文字の書き方やつづりを添削して返信する。以前は各自からノートを預かるため、急いで返却する必要があったが、今は、じっくり見てあげられるという。

 同校では2年前から生徒全員にiPadを配布し、情報の共有やコミュニケーションを重視したICT(情報通信技術)教育を進めてきた。休校が始まった今年3月からはオンライン授業を開始。平日は午前8時半過ぎに出席をとり、9時から授業が3時限。午後は英会話や個人面談、課題の学習など。授業時間は各40分、休憩は各20分。目が疲れるため授業は通常より10分短く、休み時間は次の授業で使うソフトの設定などのため10分長くしている。生徒同士で個別につなぎ、画面に提出物を映し出して書き込めるのでグループワークも可能だ。

「部活の引退イベントが」学校生活に渇望も

 「友達の顔が見られてうれしい」「休み時間や放課後に、仲良しの友達とおしゃべりするのが楽しみ。友だちの誕生日をオンライン上でお祝いしました」。生徒は端末を最大限に活用する一方、「部活の引退イベントの新入生歓迎発表会を開きたかった」「生徒総会を開催したい」など、リアルな学校生活への渇望感も強い。同校には音楽科もあり、合奏などの実技には通信上の課題もある。「家では集中できない。学校も図書館も塾も閉鎖で、勉強できる場所がない」と嘆く高3生もいた。

 教師側も、機器や様々なソフトの使用法に習熟する必要があり、研修や教師間での共有など、様々な工夫をしている。生徒から夜間に使い方の質問がメールやチャットで来ると、「学ぶ意欲を止めたくない」と、早めに答えるようにしている。

 授業によっては、高2までの5年間に300時間を使う「総合探究」のフィールドワークなど、オンラインでは出来ないものもある。「オンラインでも知識の伝達は何とかなるが、人間的な成長のために何を提供できるか。学校の再開後、授業のあり方や学校の存在意義について考え直すことになる」と山本学教頭は話す。

教師も自宅から、書道も開始予定

 「今回、導き出さなきゃいけない大事なキーワードはなんだったでしょう」

 4月28日、私立中高一貫校、栄東中学・高校(さいたま市)の生徒がいない教室で、社会科の坂本大志(まさゆき)教諭(42)がノートパソコンに向かって語りかけた。高3向けの日本史の授業だ。

 生徒から提出された江戸時代の交通発達に関する課題を、タブレット端末の画面上で添削し、解説する。ライブ配信なので、生徒の表情や反応は見えない。こまめに質問を投げかけ、チャットで回答してもらう。坂本教諭は「授業で手を挙げるのをためらっていたような生徒も、チャットだと応じてくれるなど意外な発見もあった」と手応えを口にする。

 栄東には、埼玉県外から通う生徒も多い。休校中、どう学習力を維持・向上させるか――。外出自粛要請が続く中、生徒へのウイルス感染を防ぐためにも、4月20日から中学・高校ともに生徒の私有端末などを活用し、主要5科目のオンライン授業を始めた。平日は朝のホームルームから1コマ50分の授業を通常の時間割で実施。土曜日(第三土曜日を除く)も午前中の4時限まで行う。教職員の感染を防ぐため、約8割の教師は自宅から授業を行う。今月11日からは書道などの実技科目も始める予定だ。

 自らも中1に英語を教える田中淳子校長は「最初は手探りだったが、生徒は全員授業に参加し、先生たちも工夫をしながら授業をしてくれている。協力してくれている保護者には感謝しかない」と話した。

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■公立高も奮闘、校長がライブ…

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