第5回「一度リセットさせて」 三宅宏実が父に打ち明けた落胆

有料記事アスリートの現在地 東京五輪

松本龍三郎 山口裕起
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重量挙げ メダル候補はベテランぞろい

新型コロナウイルスの影響で延期になった東京オリンピック。突如できた1年の時間は、アスリートたちにどう影響するのか。担当記者が探ります。

 重量挙げでメダルが期待される女子の代表候補はベテランぞろい。「いま脂が乗っている選手が多いので、正直なところ、1年の延期はかなり痛い」。日本ウエイトリフティング協会の三宅義行会長は言う。

 最も影響を受けるのが、会長のまな娘、三宅宏実(49キロ級、いちご)だろう。2004年アテネ五輪から5大会連続出場、そして3大会連続のメダル獲得をめざす第一人者も、今年11月に35歳を迎える。

 昨年は度重なるけがに苦しみ、大会欠場も相次いだ。「どうせだったら、格好良く、やり切った状態で終えたい」。万全にはほど遠いと分かってはいたが、今年7月にあるはずだった五輪で競技生活の集大成を見せるつもりでいた。

 それだけに、延期決定直後は落胆を隠せなかった。「1年後となると、体力的にも、精神的にも厳しい。一度リセットさせてほしい」。そう父に打ち明けたという。

連戦の日々に小休止

 一方、昨年の世界選手権で日本勢最上位の5位に入った27歳の安藤美希子(59キロ級、FAコンサルティング)にとっては、延期が追い風になるかもしれない。連戦からくる疲労に悩まされていたからだ。

 重量挙げではドーピング違反が多く、国際連盟は対抗策として、東京五輪の出場権争いでは過去の五輪より多くの大会に出ることを選手に課してきた。昨夏の五輪テスト大会で、安藤はこんな本音を漏らしていた。「高校生でもここまで頻繁に試合はないので、かなりあり得ない状況だな、と。年齢も年齢ですので、疲労が抜けきらない……」

 春に開催予定だった重要大会が新型コロナウイルスの影響で相次いで延期となり、今後の選考は不透明な部分もある。とはいえ、すでに獲得ポイントが高い安藤は、空白期間が延びればその分、他選手に比べて調整に余裕が持てるのも確かだ。

 「体を酷使する競技の特性上、我々は大会に向けて1年近く前から準備する」――。五輪メダリストでもある三宅会長の言葉だ。全員に与えられた1年の時間を生かした選手が、本番の表彰台に近づく。(松本龍三郎、山口裕起)

重量挙げの「現在地」

 東京五輪で実施されるのは男女とも7階級。各階級1人ずつ、男女とも最大4人が出場できる。開催国の日本は男女各3枠が確保されている。2018年11月~20年4月の国際大会のポイントランキングにより代表が決まる予定だった。日本選手が8位以内に入る階級が四つ以上か、三つ以下の場合でも、9位以下でアジア大陸最上位になる階級と合わせて四つ以上あれば、4人目が出場できる。これまで、日本選手の内定者はいない。

記事後半では、競技を担当する記者が「現在地」から見た思いを語ります。

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