ぼくはパチンコで救われた 編集者が語る「不要不急」

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聞き手・中島鉄郎
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 一日何十回も「不要不急なことは自粛」と聞かされる日々。もちろんそれは守ります。でも、脳内でめいっぱい不要不急なことをしちゃいたくもなる。世間の「不要」でも自分には「要」ということ、ないですか? エロやパチンコという「不要不急分野」における伝説の編集者・末井昭さん(71)に話を聴きに行きました。

 ――コロナ禍によって「不要不急」という言葉で人間の営みが分けられています。

 「人によって、何が不要不急かは違いますよね。今は政治が、最大公約数的な観点から『これは不要不急だから自粛して』としてしまうけれど、現実には誰かの不要不急でも、ほかの誰かには『要』だったり、『急』だったりするわけです」

 「そんなこと言ったら、自分自身が最大の不要不急的存在に思えてきます。若い頃は、社会の下のほうで生きていて、自分は不要な存在だと思っていましたから」

 ――「写真時代」はエロ雑誌だし、「パチンコ必勝ガイド」は一種のギャンブル雑誌。末井さんが編集者としてヒットさせたのは、現下の分類では「不要不急もの」になりますね?

 「エロ雑誌はどうかな。まあ『エロがあるから性犯罪が少なくなる、だから要』と言えるかも知れないけど無理があるな。ただ、エロ雑誌という舞台は、無名のライターやカメラマン、イラストレーターには収入源になっていた。だから、世間には不要でも、誰かの『要』になる。まあ、ぼくはエロをまじめに追求する気がなかったから、あまり要とか不要とか言えないけど」

 ――人間にはエロが「要」だ、と追求したのではなかった?

 「エロを必要とする人のためにまじめに追求すると、保守的になるんですよ。モデルのパンツは白じゃないと、女の子は美人じゃないと、おっぱいは大きくないと、とか、パターンが決まっている。写真家の荒木経惟さんに撮ってもらっていたんだけど、モデル料も安いから、えーっと驚くような女性がモデルで来る。そのほうが面白いんですね」

 「でも今でも時折、『末井さんの雑誌に昔、お世話になりました』なんて声かけられることがあります。あんな雑誌で『要(用)が足りたのか』と驚きます(笑)」

パチンコ台が「話しかけてきた」

 ――1988年に創刊した「パチンコ必勝ガイド」はバカ売れしました。

 「ええ。利益率も高くて、上司が思わず『雑誌じゃなくて、お札を刷っているようなものだ』と言ったほど売れまくりました」

 ――今は「不要不急」とされ、休業しなかったパチンコ店や、そこに通う客が冷たい視線を浴びました。どう思いますか。

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 「パチンコ業界は、3・11…

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