登園自粛しても保育料 「仕方なく出勤」招く本末転倒

伊藤舞虹
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 新型コロナウイルス感染拡大防止のために保育園への登園を自粛しても保育料が減免されず、家計への負担が重すぎるとして、認可外保育施設を利用する保護者が自治体や国に対策を求めてインターネットサイト(https://www.change.org/ninka-gai-school別ウインドウで開きます)で署名を集めている。このままでは保育料を払うために子どもを預けて出勤せざるを得なくなる保護者もいるとし、本末転倒だと訴える。

保育料「返金なし」にがくぜん

 署名活動を始めたのはさいたま市のパートの女性(27)。4歳の長男を市内の認可外施設に預けている。新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言発令後の4月7日、施設側から「市からの指示で、8日以降は登園を自粛してほしい」という連絡が来た。保育園に通えなくなることはある程度覚悟していた。しかし、がくぜんとしたのは保育料を「返金しません」と言われたことだ。

 月の保育料は税込み6万6千円。うち3万7千円は、昨秋に始まった幼保無償化で払い戻されるが、2万9千円は自腹。また払い戻しも4~6月分は7月に申請することになっており、振り込まれるのはさらに先だ。新型コロナの影響で3月下旬から勤め先が休業となっており、働きたくても働けない状況の女性に、保育料の負担が重くのしかかる。

 同じ施設を利用する保護者の中には、登園自粛の要請を受けていったんは仕事を休んだものの、保育料を払うために再び子どもを預けて働かざるを得なくなった人もいる。別の保護者は収入が減り、退園も考え始めたという。だが、市内の保育施設の定員に余裕はなく、一度退園すれば新たな預け先を探すのは難しい。

 女性は「自粛に応じれば家計が苦しくなり、預ければ子どもや保育士を感染リスクにさらすことになる。子どもの命がかかっている今、すべての認可外で保育料を返金できるしくみをつくるべきだ」と憤る。

認可は日割り計算 事業者も苦境

 保護者に登園自粛を求めるにあたり、政府は認可保育園認定こども園などの認可施設については、返金できるしくみを整えている。保護者は登園した日数分だけ保育料を負担すればよく、それによる施設側の減収分は、国と自治体で穴埋めをする。

 一方、認可外施設に同様のしくみはない。認可施設の定員に空きがないために認可外施設を利用せざるを得ない保護者も多いが、厚生労働省の担当者は「認可外施設は自治体の認可を受けず、事業者と利用者との間の民間契約で運営されており、国から返金についてどうこう言えない。今後の方針についても、決まっていることはない」と話す。

 事業者は苦境に立たされている。埼玉県白岡市で認可外施設「サクラ保育所」を経営する細井藤夫さん(46)は「登園を自粛している保護者からも保育料をいただくのはしのびないが、返金して収入がなくなれば運営を続けられない」と話す。運営資金のほとんどを保育料でまかなっているからだ。

 4月から18人の園児を受け入れているが、現在利用しているのは5人ほど。利用者から子どもの年齢に応じて月4万7千~6万1千円の保育料を受け取るが、その大半を職員の人件費や光熱水費に充てている。時には私費を持ち出すこともある。

 登園自粛で利用する子どもの数が減り、仕事を休んでもらった職員もいるが、その間の補償は出さなければならない。一方、1日も子どもを預からないのに保育料をもらうのも難しい。「5月は収入ゼロも覚悟し始めているが、こんなことをしていては潰れる施設が出てくるだろう。そうなれば保護者は働けなくなり、新たな貧困を生み出しかねない」と警鐘を鳴らす。

返金する自治体も

 独自の判断で、認可外施設でも保育料が返金できるしくみを整備する自治体もある。

 東京都練馬区は区内すべての認可外施設の利用者を対象に、保育料の日割り計算ができるしくみを導入する。保護者はいったん施設側に保育料を支払い、登園しなかった日数分の金額を後日区から返金するという。

 福岡市も市内すべての認可外施設を対象に同様のしくみを設ける。認可外施設に通う約3500人が対象となり、今年度の補正予算に8600万円を計上した。担当者は「感染リスクを下げるための取り組みに施設の種別は関係ない。保護者にも安心して登園自粛に応じてもらえるよう検討した」と話した。伊藤舞虹

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