延期、心が乱れたアスリート オリパラへ立て直す胸の内

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聞き手・構成 忠鉢信一 斉藤寛子
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 東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの延期は、世界中のアスリートの心を揺さぶった。近代五輪では史上初の「延期」に、どう向き合うのか。2人の選手に胸の内を語ってもらった。

梶原悠未は混乱し、励まされ、決意した

 今年2月の自転車トラック種目の世界選手権で、1日で4種目を行う女子オムニアムで優勝し、世界選手権と五輪を通じ初めて日本自転車女子に金メダルをもたらした梶原(かじはら)悠未(ゆうみ)(23歳、筑波大大学院)。五輪金メダルの有力候補と言われてきたが、その機会は持ち越しになった。

   ◇

 3月中旬以降、東京五輪延期についての報道が多くなりました。それを目にするたび、不安と戸惑いが強くなりました。五輪で金メダルを取るという決意がそがれ、練習に身が入らない日々が続くようになりました。

 ここで気持ちを切らしたら、予定通り開催された場合に準備が間に合わなくなる。しかし延期になるなら、焦って練習しないほうがよいかもしれない。様々な気持ちが入り交じり、練習のために山へ向かって走り出しても、足に力が入らず、練習をしなければと思っても、頭の中は混乱し、体が家の方へ引き返していました。

 3月24日夜、五輪の延期が発表されました。適切な判断だと理解はしましたが、これから先、どうしていけばいいのか分からなくなりました。その夜は眠れませんでした。

 翌日、代表者だけが参加した筑波大の卒業式がありました。一緒に写真を撮った友人に「来年がんばって」と声をかけられ、前向きな気持ちが湧いてきました。そして、多くのメディアの方々から五輪延期の感想を聞かれ、言葉を探していくうちに、自分の中で気持ちが入れ替わっていく感覚がありました。

 「1年間の、さらに強くなるための時間ができました」。最初は、自分の中で見つけた言葉を継ぎ足すように口にしていたのが、だんだん一つにまとまって、自信を持って言えるようになっていきました。そして、今よりいっそう強くなった自分が東京五輪に挑む姿を、鮮明に思い描けるようになりました。

「1年後、またきれいな桜を見る頃に…」 こう語る今の梶原選手の決意とは? 記事後半では、家族の協力で練習に励む全盲のジャンパーも語ってくれています。

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 今は固い決意があります。五…

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