鳥取)倉吉ブックセンターディレクター円谷禅さんに聞く

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斉藤智子
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 鳥取県倉吉市の白壁土蔵群のほど近く、市内最古の町家「倉吉淀屋」がある並びの静かな通りで、ふと目に飛び込む「本」の四角い看板。引き戸を開けると、奥に細長い店は、壁に古書と新刊が詰まった書棚。中央に、一冊一冊、表紙を敷き詰めるように本が並べられた台。黒々とした梁(はり)の間から、電球形の照明が光を投げかけている。倉吉ブックセンターは古い町家を生かした小さな本屋だ。

 「父が本好きで。本のセレクトは主に父、僕は配置する。『見せる本屋さん』が譲れない意識としてあって」。並ぶ本の間には季節の花を生けた器、ミシン、押し花、貝殻、友人が作ったアクセサリーや雑貨が収まる特等席もある。自身で選んで入れた本や物は、縁あって出会った作家の作品をはじめ、自分の言葉で物語を語れるもの。「経験とか人生の中にある、かみくだいたものを発信したいという思いがあって」

 ここは何の展示場、と、ふらっと入ってくる客が少なくない。ボールペン画の独特な作風で知られる現代美術家・永本冬森(ともり)さんも、ふらっと店に入ってきた。こうして始まった縁がつながり、2015年、永本さんが市内で滞在しながら住民ら有志と作品制作するアートプロジェクトに参加した。歌手の山崎まさよしさんの148の楽曲を、ことばと肖像画をのせた148冊の本にして表現する、というものだ。本のハードカバー装丁を学び、夜な夜な本作りの作業に集中した。

 プロジェクト後、昭和前半など古い文庫本をハードカバー装丁で生まれ変わらせたり、豆本を作ったり、ワークショップを開くようになった。智頭町特産の智頭杉で装丁したノートを作ったのも最近の挑戦。装丁が縁で、ものづくりをする人との出会いが増えた。

 「人とのご縁ってすごい。人って、一人の背景にすごい物語がある」。ここは、物語を人から人へつなぐ店だ。(斉藤智子)

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■文化は人のつながりから…

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