「お前、クビや」見抜いていた料理長、准教授になった僕

有料記事

佐藤恵子
[PR]

 9年ぶりの再会は大阪・ミナミの鳥料理店だった。

 小川修史(ひさし)さん(40)はカウンター席に座り、ビールを頼んだ。向かい合った料理長は50代半ばになっても、無精ひげ姿で変わらない。会話はすぐにあの頃の話に。酔い始めると、料理長が笑いながら言った。

 「おまえ、どうしようもないやつやったもんな」

 20年前。料理長が当時いた京都の和食店に、大学生の小川さんはアルバイトで入った。その1週間後。クビを言い渡されようとしていた。注文を聞き間違え、客の声かけに気づかない。そんなことが毎日、何度もあった。

 救ってくれたのが料理長だった。「こいつは真面目やから、工夫さえすれば使えるんや。おれが面倒見たるわ」。店長にかけ合ってくれた。

 調理場の担当に変わっても、ミスは続いた。揚げ物の時間を忘れ、皿に載せる天ぷらの数は間違える。それでも、料理長は責めずに言ってくれた。「ケツはふいたるから、やれることやれ」「手抜いたら、おまえっぽさがなくなるやん」。応えたくて、手が空いてもバイト仲間のおしゃべりには加わらず、掃除を続けた。仕事に慣れた頃、「副料理長」とあだ名をつけてくれたのも料理長だった。

 ある日。閉店後の店でいつものように2人でビールを飲みながら、料理長に言ってみた。「料理の世界に入りたい」

 返事は想像していたのと違った。

ここから続き

 「おれ、アホやからようわか…

この記事は有料記事です。残り536文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら