イスラム教徒が日の出から日没まで一切の飲食を断つ、ラマダン(断食月)が始まる。例年は大勢で食事をして夜の街がにぎわうが、新型コロナウイルスの影響で、今年は様相が一変しそうだ。それでも、人が集まることによる感染拡大が懸念されている。

 中東最大の人口約1億人の9割をイスラム教徒が占めるエジプトは、24日にラマダン入りする。いつもはこの時期になると、商店や家の軒先に色鮮やかなランタンが飾られるが、今年は少ない。カイロ近郊のギザ県でランタンを売るムハンマド・ガズリさん(34)は「みんな外出しないから、物が売れない」と嘆く。昨年と比べ、売り上げは8割減ったという。日没後に食事を振る舞うテーブルが街中に設けられ、若者が夜更けまでカフェなどに集うのも恒例だが、夜間の外出禁止令がラマダン中も継続される。

 イスラム暦で神聖な月とされるラマダンは約1カ月間続く。断食は信徒に課せられた「五行」の一つで、日中に飲食を断つことで貧しい人を思いやる気持ちを育み、神の恵みに感謝する。家族や親戚らと食卓を囲む「イフタール」(日没後の食事)を楽しみ、夜遅くまで人々が買い物に繰り出す。

 新型ウイルスの影響でモスク(イスラム礼拝所)や商業施設が閉鎖されている国も多いが、ラマダンは信仰心が高まる時期でもある。宗教や伝統を重んじてモスクでの礼拝や外出をする人が増えれば、感染リスクが高まるとの懸念がある。国連のグテーレス事務総長は11日、ラマダンなどの宗教行事について、「家族が集まり、抱きしめ握手をする機会だが、今はこれまでとまったく違うときだ」と訴えた。

 聖地メッカを抱えるサウジアラビアは、ラマダンの礼拝をモスクでなく自宅で行うよう求めている。聖地への巡礼も原則停止している。世界最多の信徒がいるインドネシアではテレビ会議システムを使って指導者の言葉を流して家から礼拝したり、日没後の食事をウェブで共有したりする動きが相次ぐ。一方、4月初旬に当局が禁じたモスクでの礼拝を無視して警察と衝突する騒ぎが起きたパキスタンは人と人の間に約2メートルの間隔を取ることなどを条件に、モスクでの集団礼拝を認めた。

 湾岸諸国ではモスクで数百人が…

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