第5回「鎖国」即断、緩まぬ国民性 これがイスラエルの底力か

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「もはや要請ではない 命令です」

 長い長い1カ月だった。イスラエルでの外出禁止令のことだ。罰則付きの厳しい制限のもと、自宅で息を潜める生活が続いた。感染のピークを越え、外出禁止が段階的に解除され始めたいま、国全体で耐え忍んだ日々を振り返ってみたい。

 政府が外出禁止令を出したのは、3月19日のことだった。テレビの向こうで、ネタニヤフ首相が言った。

 「国民の皆さんは、家にとどまって下さい。もはや要請ではありません。命令です」

 あの頃、まだ国内の死亡者は0人だった。

 「感染者は倍増している。多くの死者が出ます」と首相は訴えていた。正直、大げさ過ぎると思っていた。

 翌日、88歳の男性が死亡した。初の死者だった。2日後には感染者が1千人を超え、人口が10倍以上ある日本の感染者数を一気に抜き去った。

 通りから人が消え、ふだん食料品の買い出しに通っていた市場は閉鎖された。「外出は自宅から100メートルの範囲まで」「違反者には罰金」――。規制はどんどん強まった。短い外出でも、パスポートを持ち歩くのが習慣になった。

 ちょうど、日本では東京五輪の延期が決まったころの話だ。ネットで流れてくる満員電車の光景を見ながら、「別世界のようだ」と感じたのをよく覚えている。

 毎晩、午後8時ごろになると首相がテレビ画面に現れる。「皆さん、いまは運命の1週間です」。生中継でスピーチが流れる。家の中に閉じこもっていても、なんとなく国民が一体になって戦っている雰囲気があった。

 紛争地に生きる国だからだろう。国家としての危機意識の高さをまざまざと見せつけられた。

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 政府は判断が早かった…

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