ちぐはぐコロナ対応、プーチン氏いまやロシアのリスク?

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大野正美
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 最大2036年までの任期延長に向けて着々と動き出し、盤石に見えたロシアのプーチン大統領。その権力基盤が、急速に揺らぎ始めている。20年もの間、権力の頂点に君臨するうちに現実感覚が薄れ、新型コロナウイルスの猛威を前に、不適切な判断や行動を繰り返しているという指摘も出ている。さらに、これまでのプーチン政権下では経験したことのない経済的苦境に陥っている。安定の保証者だったプーチン氏こそが今やロシアのリスク要因、との見立てすら出てきている。求心力の低下は、北方領土問題の今後にも影響を及ぼしそうだ。

権限強化、任期延長に道を開いたが、、、

 プーチン氏は当初、憲法改正に関して、大統領の3選禁止や首相選任などでの議会の役割を強化する方向を示唆した。だが、3月にまとまった改正案は、むしろ下院の解散や憲法裁判所判事の解任などで大統領権限が強化された。プーチン氏の4期に及ぶ大統領任期がカウントされず、36年までの在任を可能にする改正案も最後に加えられた。プーチン氏が合計36年もの間、実質的な最高権力者に居座り続けられる憲法改正案だった。

 この憲法改正案は、今月22日に設定した「全ロシア投票」で賛成を得て成立するはずだった。プーチン氏は、大統領権限を強化する憲法改正を短期間で終え、圧倒的な政治力を見せつけつつ、自らのさらなる求心力の強化につなげることを意図したとみられる。

新型コロナ、原油暴落で暗転

 だが、新型コロナウイルス感染症の急拡大により、プーチン氏が3月25日に全ロシア投票の無期限延期を決めざるをえなくなって、すべてが暗転した。ロシアの有力紙「コメルサント」は「(プーチン氏の)20年間の統治で初めて自分のシナリオ通りでなく、状況に振り回される事態となった」と評した。

 原油価格の急落も追い打ちをかけた。プーチン氏はサウジアラビアとの対立により、石油輸出国機構(OPEC)との原油の協調減産から抜ける決断をした。ところが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、原油の需要が急減。原油価格は、プーチン氏が大統領に就任した20年前の水準まで下がり、ロシアはかつてない経済的な苦境に陥っている。

 新型コロナウイルス対策をめぐっては、政権内の足並みの乱れも目立つ。

 たとえば、ソビャニン・モスクワ市長は、地方構成体の長らでつくる国家評議会を足場に、外出制限に基づく隔離策を強力に推し進めている。一方、ミシュスチン首相は隔離策が経済に与える悪影響を恐れ、生産や社会のシステムを一定程度保つことを重視し、対立が続いているといわれる。

 ところが、プーチン氏は両者を調整する労をほとんど取らずにいるという。

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 この間、プーチン氏は、新型…

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