第3回風や潮目が読めない 五輪選手すら恐れる地球規模の異変

有料記事スポーツ地球異変

遠田寛生
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 拝啓、運動好きの方々へ。ある日、知人から言われます。「5年後、大好きなスポーツが同じように楽しめないかもしれない」。突然、そんな言葉を投げかけられたら、信じられますか。私は懐疑的でした。現場を見て回るまでは。伝統競技、人気競技でも、気候変動による異変はスポーツの現場でも起きていました。

荒れる海 ヨットをだせない

 童話「北風と太陽」を思い出した。

 深くかぶっていたダウンジャケットのフードを、思わず右手で強く押さえた。顔に当たる風が冷たい。無抵抗なら横に倒されそうなほど勢いがある。目の前の車から高齢の男性が小型犬と出てきた。散歩目的だろうか。数メートル歩いたところで犬を抱えると、慌てて車へと引き返していった。

 2月15日、英南部ベクスヒル。眠い目をこすりながらロンドン中心部から電車で約2時間半かけて、英仏海峡に接する地にやってきた。午前8時すぎ、暴風雨「デニス」の上陸間近とあって、海岸の波は荒れ始めていた。波頭はいたるところで白く泡立っている。

 海岸沿いを歩いていくと、1人の男性が待ってくれていた。ニック・レドマンさん。この地で生まれ育ち、会計士の仕事を終えて現在は隠居生活を送っている。趣味は約25年続けているセーリングだ。英国では特に人気が高く、夏季五輪競技でもある。地元開催だった2012年ロンドン五輪で、英国のベン・エインズリーさんが五輪通算4個目の金メダルを獲得したのは記憶に新しい。好む理由について「島国だし、英国民としての血に競技への情熱が流れているのかも」と笑う。

 最近大好きなスポーツに心配事が出てきた。「ここ10年ほど悪天候が増えた。天気の規則性がなくなり、展開が読めない」。以前と比べ、海面でボートを操るのが難しくなってきたというのだ。

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