維新10年、「吉村寝ろ」に見る世代交代 重なる不祥事

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笹川翔平 吉川喬
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 新型コロナウイルスをめぐって地域政党大阪維新の会」代表代行の吉村洋文大阪府知事)の発信力が目立っている。大阪の感染者は東京都に次いで全国で2番目に多く、矢継ぎ早な対応が不可欠な立場だが、目立つのは別の側面もある。今月19日で発足10年を迎えた政党の将来を占う動きでもある。

 「休業要請をした皆さんに、個人事業主は50万円、中小は100万円の支援金を実施したい」

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発出されるなか、吉村は15日の定例記者会見で、休業要請に協力した事業者へ支援金を出すと発表した。吉村はもともと「財源不足でできない」と繰り返してきたが、同様の制度を打ち出した東京都と足並みをそろえることにした。

 東京都に比べて圧倒的に財政力が劣る大阪府は、600億円から700億円に達する費用を市町村と折半することで何とか財源を捻出。市町村と事前の調整をしないままの見切り発車だったが、後押ししたのは大阪維新の会代表で大阪市長松井一郎だった。事業者が圧倒的に多い市内を所管する松井だけが事前に了解し、休業支援がスムーズに進むようにした。

 10年前にできた維新はもともと、元代表の橋下徹と松井が引っ張ってきた。維新関係者が「橋下は人をまとめることは苦手だ。それを松井がやってきた」と語るように、組織を固めてきたのが松井だったが、その松井は、周囲に「早く引退したい」と繰り返している。この10年、維新を率い続けた疲れだという。

 松井が後継として念頭に置くのが吉村だ。新型コロナウイルスへの対応をめぐっては、事前に2人ですりあわせたうえで、メディアに露出して連日のように情報を発信するのは吉村だ。松井はあえてそう役割分担して「次」を見据えている。

地域政党「大阪維新の会」が設立されて10年。橋下徹氏が去った後も大阪で抜群の強さを誇るが、不祥事は絶えず全国進出の壁も高い。次の10年を見据えた世代交代も重い課題だ。

 吉村は新型コロナへの対策を途切れなく打ち出してきた。休業支援金は東京を後追う形だったが、感染者の立ち寄り先を真っ先に独自に詳細に公表。厚生労働省を「あまりにも公開しなさすぎ」と批判してきた。厚労省の専門家による感染者数が急増するという非公表の試算もあえて公開し、独自判断で兵庫県との往来自粛を呼びかけた。緊急事態宣言が出る前から、週末の外出自粛も府民に求めた。

 記者団の取材に毎日、テレビカメラの前で応じるとともに、自らツイッターで発信する。テレビでの露出も関西ローカル枠を超えて増え始め、東京都知事小池百合子と並んで連日のように発信している。

「#吉村寝ろ」がトレンド入り

 新型コロナ対応の特措法については、「欠陥だらけでして、国会議員、ちゃんと仕事しろよと思っているんですけどね」。維新は安倍政権と近い存在だが、政府批判もいとわない。積極的な発信と素直な物言いに注目が集まり、コロナ対策に追われる吉村を励ます「#吉村寝ろ」という言葉がツイッターのトレンド入りしたほどだ。

 一連の吉村の動きが維新の世代交代につながるか。党内に「松井のいない維新は想像できない」(ベテラン府議)との声は根強いなか、注目が集まっている。

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 維新には、世代交代だけでな…

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