感染拡大、猛威を語る無数のベッド 武漢の仮設病院ルポ

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武漢=平井良和
【動画】中国・武漢市内の大型展示場を改造してつくられた軽症者用の仮設病院が公開された=平井良和撮影
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 新型コロナウイルスの感染が最初に広がった中国・武漢市で9日、ひっぱくした医療機関を支えるために設けられた仮設病院を、市当局が一部外国メディアに公開した。大量のベッドを埋めた患者はすべて退院したが、現場にはウイルスとの闘いの厳しさが刻まれていた。

 市担当者の案内で記者が訪れたのは、2月初旬から武漢で開設された仮設病院の一つ。軽症者を収容するために大型展示場を改造したもので、用意された約1500床のベッドはすぐに埋まったという。

 約4千平方メートルのホールには今も約700床のベッドが並んでいる。約20床ごとに間仕切りで囲まれた「病室」には空気清浄機が付けられ、ベッドの脇には小さな机が置かれている。

 「泣いても意味がないと言われても、泣きたい時は泣こう」

 病室の壁にはそんな言葉も飾られていた。

 章軍建院長は「普通の病院のような設備はない。不安を感じる人も多かったので、心のケアを重要な仕事と考えていた」と話す。本などが置かれた共有スペースがあるのはそのためだ。

 武漢ではピーク時、連日1千人を超える新規感染者が出た。病院で治療を受けられず、自宅に戻された軽症者が家族らに感染させる悪循環に気づいた当局は、2月中旬までに14カ所、計1万2千床以上の仮設病院を設置。この措置が感染の勢いを止める鍵になったと指摘する専門家は多い。

 3月上旬にはすべての仮設病院が閉鎖され、武漢は今月8日、2カ月半にわたった都市封鎖が緩められた。しかし、武漢の人々は警戒を解いていない。およそ半数のベッドを残したのは、再び感染拡大が起きた時に備えるためだ。(武漢=平井良和)

取材の経緯

 朝日新聞は、新型コロナウイルスの感染拡大で過酷な状況を経験した武漢市の実情を報道する意義は大きいと考え、8日の封鎖解除に合わせ記者を派遣しました。市政府が設けた取材機会には当局者が同行しましたが、検閲は受けていません。記者は可能な限り感染予防策を講じ、取材手法にも必要な配慮をしています。

仮設病院、工夫と試行錯誤

 中国・武漢で、新型コロナウイルスの勢いを抑える上で効果を発揮したとされる軽症者用の仮設病院。医療スタッフへの感染防止や患者の心のケアのため、様々な工夫と試行錯誤が重ねられた。

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 9日、記者が訪れた仮設病院…

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