笹子トンネル事故、再び不起訴 捜査終結し遺族は憤り

玉木祥子 田中正一
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 2012年12月、山梨県大月市の中央自動車道笹子トンネルで天井板が崩落し、9人が死亡した事故で、甲府地検は9日、検察審査会の議決を受けて業務上過失致死傷容疑で再捜査していた中日本高速道路の社員ら2人を再び不起訴処分(嫌疑不十分)とし、発表した。誰の刑事責任も問われないまま、事故の捜査は終結した。

 不起訴になったのは、中日本高速の監督者と子会社の現場責任者の2人。地検は事故を予見できなかったとして、「過失責任を問うことは困難」と判断した。

 地検は18年3月、同容疑で書類送検された中日本高速の元社長ら8人全員を不起訴処分(嫌疑不十分)とした。遺族の申し立てを受けた甲府検察審査会は昨年7月、元社長ら6人を「不起訴相当」としたが、今回の2人については点検の専門知識があったとして「不起訴不当」と判断した。

 事故では、トンネル天頂部のボルトが落ちてつり金具が外れ、天井板が約140メートルにわたり崩落。車4台が巻き込まれて9人が死亡、3人が負傷した。検察審査会は不起訴不当の2人について、事故2カ月前の詳細点検で双眼鏡を使わず、肉眼で点検していた可能性があるなどと指摘していた。

 全員の不起訴で捜査が終結したことに遺族は憤りを表した。長女の松本玲さん(当時28)を亡くした父邦夫さん(69)=兵庫県芦屋市=は「事故の真相や責任を明らかにできず、大変不満。これだけの重大事故なのに、誰も罪に問えないことに捜査の限界が表れている」。次女の石川友梨さん(当時28)を亡くした父信一さん(70)=神奈川県横須賀市=は「『ずさんな点検の責任の所在を知りたい』という訴えがかなわず、失望した」と話した。(玉木祥子、田中正一)

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