ソウル=神谷毅、鈴木拓也
15日投開票の韓国総選挙では文在寅(ムンジェイン)政権の前半の成果が問われる。与党は政権維持のため大統領府の元高官を大挙、立候補させた。野党は政権の看板政策の対北融和を批判し、脱北者を候補に押し出している。
拡大するソウルで2020年4月6日、街頭で候補者の演説を聴く有権者ら=鈴木拓也撮影
政権与党「共に民主党」からソウル市内の選挙区に立候補した尹建永氏(50)の選挙カーには、2018年秋に南北首脳会談で訪朝した際、文在寅(ムンジェイン)大統領と収まった写真が飾ってあった。
拡大する南北首脳会談で訪れた北朝鮮の白頭山で文在寅大統領と写真に収まる尹建永氏=2018年9月20日、北朝鮮・白頭山、尹建永氏の選挙事務所提供
尹氏は、最近まで大統領府の国政企画状況室長を務め、北朝鮮に2回特使として派遣された。日本政府の輸出規制強化への対応では陣頭指揮を執った。
総選挙には、文政権の大統領府で秘書官以上の高官を務めた候補者が10人以上も立候補した。「文の男」といわれる最側近の尹氏は朝日新聞の取材に「全員が文政権の成功のために働いてきたチーム。残り任期の2年間、政権がぶれることなく仕事をできるようにしたい」と答えた。
なぜ、大統領府出身者が大挙、立候補したのか。
日本のような議院内閣制の首相と比べ、韓国の大統領の権力は強大だ。ただ目指す政策の実現には国会で法案を通す必要があり、総選挙で過半数を得なければならない。大統領は任期が5年1期。後半になると世論ばかりでなく与党も次の政権を見すえ「レームダック」(死に体)となることが多い。この克服も大きな課題で、大統領府と国会の連携が重要になる。
ある与党関係者は、大統領府出身者の立候補に関して文大統領の指示があったかは確認できないとしつつ「(文大統領が)止めようと思えば止められる力はあるはずだが、それをしていない」と指摘。大統領府も認める「選挙戦略」であることをほのめかした。
保守系の最大野党「未来統合党」は、大統領の側近だった曺国(チョグク)・前法相をめぐる疑惑にかかわり起訴された大統領府出身者の立候補について、「大統領府出身者には法の審判を受けるべき人が多い」と批判を強めている。
曺氏の名はメディアなどからほぼ消えていたが、総選挙が始まると突然、話題になり始めた。与野党それぞれに思惑がありそうだ。
ある政界関係者は、次の大統領…