「まるでゴーストタウン」 自粛の空気に一変した街 

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松浦祥子 浅沼愛
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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言が東京や大阪など7都府県に出され、対象地域では5月6日まで1カ月間にわたって外出自粛を強いられることになった。繁華街は静まりかえり、一夜明けた朝、「自粛」を求める空気の中で、職場へと急ぐ会社員らの姿が見られた。大阪・キタの街を記者が歩いた。(松浦祥子、浅沼愛)

 7日午後、緊急事態宣言を控え、街全体はどこか落ち着かない雰囲気に包まれていた。

 午後2時 JR大阪駅前の百貨店。紳士服売り場は閑散としていた。大阪市天王寺区の岡田幸雄さん(81)はセーターを買おうと訪れたが、サイズがなく、取り寄せてもらうことに。店員には数日後に受け取りに来るよう言われたが、記者から緊急事態宣言で百貨店は休業しそうだと伝えられると、「店員さんは何も言わなかったけど」と驚いた様子。「まあ、そんなに急ぐものじゃないから」と苦笑いした。

 通院帰りに春物を探しに来店した同市北区の会社員女性(60)は「長い間いるのは怖いけど、今はお客さんがすごく少ないから逆に安心かも」。レストランフロアも閑散とし、「ここ最近はお客さんがほとんどいない日が多い」と従業員はこぼした。

 午後6時 安倍晋三首相が緊急事態を宣言した直後、駅前の歩道はマスク姿の通勤客らで混み合っていた。帰宅途中だった信用金庫職員の谷上佑さん(24)はこの日、上司から営業活動は原則中止と聞かされた。外回りを始めて半年。ようやく慣れてきただけに残念でならない。取引先はどこも新型コロナの影響で業績不振に陥っている。「資金繰りの提案をするのが本来の自分の仕事。それなのに外に出られないというのはつらい」

 午後8時 スポーツクラブの入り口に、8日から当面の間、臨時休館するとの掲示が貼り出され、利用者が足を止めて見入っていた。大阪府では、スポーツクラブも外出自粛の効果を見極めたうえで休止要請を検討する運動施設に含まれる。ほぼ毎日利用するという男性(43)は「これからは近所の公園で散歩しようかな」。

 同じ頃、阪急うめだ本店が閉店。従業員が時短営業を知らせる貼り紙をはがした。翌8日から、食料品売り場を除いて休業する。ガラス越しに店内をのぞいていた大阪府高槻市の会社員原直子さん(38)は「(感染が怖くて)最近は行かないようにしていたけど、開いていると安心する場所。街がいつもと違う光景になるのは不安です」。店のホームページはアクセスが集中し、閲覧できない状態が続いた。

ひっそりとした北新地 「ひどい光景だ」

 午後10時 歓楽街・北新地。普段はホステスや酔客らでにぎやかな通りは、ひっそりとしていた。居酒屋の前で立っていた男性店長(28)は手持ちぶさたな様子。「定休日の日曜よりも人が少ない。ひどい光景だ」と顔をしかめた。雑居ビルのネオンサインはともっているが、多くの店はすでに営業を自粛しているという。

 午後11時 曽根崎お初天神通り商店街。この時期は例年、歓迎会や学生の新歓コンパなどで混み合うが、人通りはまばら。「臨時休業」の貼り紙をした店が目立つ。客引きの男性(24)によると、タレントの志村けんさんが3月29日に新型コロナによる感染で亡くなってから、目に見えて通行人は減った。「すでにゴーストタウン。宣言が出てもむしろ影響はないのでは」とあきらめ顔だった。

 8日午前0時 阪急東通商店…

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