「経済ガタガタに…」揺れた政権、緊急事態宣言に動く訳

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岡村夏樹 二階堂友紀 嘉幡久敬 三上元 後藤一也
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 安倍晋三首相緊急事態宣言に踏み切ることになった。経済的な打撃や、「ロックダウン」(都市封鎖)と同一視されていることによる国民生活の混乱への懸念があったものの、東京都の感染者の急増や病床数のひっぱくなどを受け、宣言は避けられないと判断した。

 6日夕、首相官邸で記者団の前に現れた安倍晋三首相が求めたのは、国民の冷静な対応だった。

 「日本では緊急事態宣言を出しても、海外のような都市の封鎖を行うことはしないし、そのようなことをする必要もない」

 緊急事態宣言は海外で行われている「ロックダウン」(都市封鎖)とは異なるものであると強調する言葉には、宣言を出すことによる社会的な混乱を避けたいとの思いが色濃くにじんだ。

「経済がとんでもないことに」

 緊急事態宣言について、政府はこれまで「ぎりぎり持ちこたえている。緊急事態宣言が必要な状況ではない」(菅義偉官房長官)として、慎重な姿勢を維持してきた。

 その大きな理由の一つに、宣言が経済に与える打撃への懸念にあった。

 政権内でも議論はギリギリまで続いた。政権ナンバー2の麻生太郎副総理兼財務相は3日、緊急事態宣言を早く出すべきだと主張する閣僚の一人に「経済がとんでもないことになる。ガタガタになる」と反論したという。菅氏も経済への影響を考え、慎重姿勢を貫いていた。安倍政権を中枢で支えてきた2人の意見は、首相にとっても影響力を持った。

 小池百合子東京都知事が3月23日の会見でロックダウンを強調したことは、さらに首相らを困惑させた。そもそも緊急事態宣言が出ても「外出自粛」は要請にすぎず、強制力は伴わない。しかし、小池氏は会見で「『ロックダウン』など強力な措置をとらざるをえない状況が出てくる可能性がある」と発言。「緊急事態宣言」と「ロックダウン」を同一視する見方が広がり、スーパーなどで買い占めが起きた。

 こうした事態に、官邸からは「迷惑だ」(首相周辺)との声が上がり、政府関係者は「『ロックダウン』のイメージを払拭(ふっしょく)しなければ、パニックが起きる。経済へのダメージも計り知れない」と懸念を口にした。政権批判に直結しかねない経済や国民生活の混乱は、避けなければならなかった。

日医会長の「危機的状況宣言」

 しかし、感染は広がり、緊急事態宣言を出すべきだという世論も高まっていった。

 4月1日には、首相と懇意の横倉義武日本医師会(日医)会長が「医療危機的状況宣言」と題する文書を発表。宣言では、大都市圏を念頭に「一部地域では病床が不足しつつある」とし、これ以上の患者増加は医療現場の対応力を超えると指摘した。

 4日には東京都の1日あたりの感染者数が初めて100人を超えた。

 政権幹部によると、首相はこうした動きを受け、緊急事態宣言を出さざるを得ないと4日に最終判断したという。(岡村夏樹、二階堂友紀)

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医療崩壊への危機感…

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