米国の自殺率、戦後最悪レベル 「988」で改善なるか

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ロックフォード=染田屋竜太
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 米国で、自殺の増加が社会問題になっている。ここ20年ほど、自殺率は全国的に上昇を続け、戦後最悪の水準に達した。地方経済の疲弊や閉塞(へいそく)感に加え、銃社会も影を落とす。事態の打開へ、米政府が打ち出した異例の一手とは――。(ロックフォード=染田屋竜太)

19歳男子、フェイスブックに書き置き

 米イリノイ州、シカゴから約130キロ北西のロックフォード。この街で暮らすシャビアー・ウィットフォードさんの長男、トミーさんは2014年8月、19歳で自殺した。その直前、フェイスブックにこう書き残していた。

 「僕は無価値な人間だ」

 トミーさんは小さい頃からサッカーが得意で、学校でも人気者。ただ時々、感情を抑えられなくなることに悩んだ。高校では引きこもり、ドラッグに手を出した。うつ病と診断されたが治療がうまく行かず、本人の強い希望で家族から独立して暮らすことになった。

 トミーさんは「最近気分が悪い。また医者に行きたい」とシャビアーさんに電話をしてから約2週間後、自宅で首をつった。自分の子を身ごもった交際相手と口論になったすぐ後だったという。

 トミーさんの遺体の第一発見者となったシャビアーさんは、「何もしてやれなかった」と自らを責め続けた。精神科にかかりながら自殺についての論文を読んだり、専門家の話を聴いたりした。自殺防止の講演で自らの経験を語れるようにもなったが、今でも当時を思い出すと涙ぐむ。

 「息子が自ら命を絶つなんて想像もしなかった。自殺する可能性を疑っていれば命は救えた」

 米国では今も、自殺について、「誤った行為」などと否定的にみる考えも根強い。シャビアーさんも講演などの活動で、社会の目を恐れながら、家族をなくした経験に苦しみ続ける人に何人も出会った。「自殺をタブー視せず、広く話し合える社会になればトミーのような人を減らせる。そのためにできることをしたい」

 米国では2018年、全死亡者の死因のうち自殺は10番目だった。だが15~34歳に限ると2番目になる。

目立つ白人男性ブルーカラー

 米疾病対策センター(CDC)などによると、米国の18年の自殺者は計約4万8千人だった。男性が約8割を占める。未遂も含めると120万人に達する。

 10万人あたりの自殺者は00年の10・4人から、18年に14・8人となった。1940年代初めと同水準だ。欧州のフランス(2015年、13・1人)やドイツ(16年、10・2人)、イタリア(15年、5・7人)などを上回る。韓国(16年、24・6人)や東欧諸国よりは低いが、日本(18年、16・5人)とは差が縮まりつつある。

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