悲劇の朝から2年半、娘が迎えた卒業式 文集に涙した母

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山口啓太
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 教室は、ちょっとした興奮に包まれていた。担任に名前を呼ばれた生徒が机の間を進む。仲間から冗談交じりの合いの手が飛ぶ中、照れ笑いを浮かべたり歓声をあげたりして、一人、また一人と卒業証書を手にしていく。

 旅立ちの光景を、一番うしろの席で見ている女性がいた。児玉千穂さん(46)。灰色のジャケットと黒のスカートは、自分なりの「制服」のつもりだった。

 2年半前。次女の由惟(ゆい)さんはいつものように自転車で朝練に向かった。埼玉県立八潮南高校の野球部マネジャー。1時間くらいたった頃、家の電話が鳴った。「娘さんが事故に遭いました」。

 トラックにはねられたのだという。案内された病院の救急室で、横たわる顔に手を伸ばした。冷たかった。16歳だった。

 命日に花を供えに来てくれた同級生、気にかけてくれた野球部の副主将、同期の元マネジャー……。みな、担任に言葉をかけられ、証書を受け取っていく。由惟さんの机には、花と写真が供えられていた。

 あの事故さえなければ――…

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