「検察と警察の私物化」 野党が政府人事を批判

三輪さち子
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 安倍晋三首相の悲願だった集団的自衛権の行使を認めた人物は、果たして「警察の監督者」にふさわしいか――。26日の参院予算委員会で、横畠裕介・前内閣法制局長官国家公安委員に充てる人事をめぐり、野党議員が問題視。政権に近いとされる東京高検検事長の定年延長の問題と絡め、「検察と警察の私物化だ」と迫ったが、菅義偉官房長官は「問題ない」との認識を繰り返した。

 政府は17日、横畠氏を国家公安委員に充てる人事案を国会に提示した。国家公安委員は首相の任命で、任期は5年。国家公安委員会警察庁や都道府県警察の幹部の任命などの権限を持つ。

 横畠氏は検事出身で、1993年から法制局に勤務し、2014年5月に法制局長官に就任。安倍内閣が同年7月、長年禁じられてきた集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈を変更した際には、当時の高村正彦自民党副総裁や北側一雄公明党副代表らとともに「5人組」の一人として、閣議決定の文案作りに秘密裏に関わった。歴代の長官が積み上げてきた「憲法上行使できない」とする解釈を、一転して認めた横畠氏に対し、強い批判が上がった。

 野党統一会派の小西洋之氏(無所属)は26日の参院予算委でこうした経緯を引き合いに「憲法の解釈変更を主導した人物を国家公安委員に内示するということは、警察の私物化を狙っているのではないか」と批判。菅氏は「まったく当たらない」と否定した。

 小西氏は、政府が法解釈を変えて黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年を延長したことを念頭に「安倍内閣は、検察と警察を私物化しようとしているのではないか」とも指摘したが、菅氏はこれも否定した。

 横畠氏は、19年3月の参院予算委で「(国会の機能は)声を荒らげて発言するようなことまでとは考えていない」と小西氏を揶揄(やゆ)するような答弁をし、金子原二郎委員長から厳重注意を受けている。小西氏は過去の因縁に触れ、「三権分立を侵すような職責を逸脱した横畠氏が、国民の良識を代表すると考える理由は何か」とただしたが、菅氏は「本人も取り下げておわびをしている」と述べ、問題視しなかった。(三輪さち子)

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