池の水抜いたら人間の闇が メダカが消える日は来るのか

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今田幸伸
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 メダカが国のレッドデータブックで「絶滅危惧2類」(絶滅の危険が増大している種)とされたのは1999年。野生のメダカは生態系保全のシンボルになった。それから20年余り。池の水を抜くテレビ番組でも脚光を浴びる、水辺の生態系はどう変わったのか。

分水嶺を越えたのか

 メダカが絶滅危惧種に指定された翌年、環境ジャーナリストの小澤祥司さん(63)は『メダカが消える日』を著した。90年代後半からインターネットを通じてメダカの調査を呼びかけてきた小澤さんはこの本で、メダカの危機的な状況と、それをもたらした農業の構造変化に警鐘を鳴らした。

 消える日は近づいたのか、遠のいたのか。改めて聞くと、小澤さんは「半々ですねえ。まだ遅くないという気もするし、もう分水嶺(ぶんすいれい)を越えてしまったかなという思いもあります」と答えた。

 JR宇都宮駅から車で東へ15分。中茎(なかくき)元一さん(72)の休耕田に、水を張った池がある。そっとのぞくと、暖冬の陽気に誘われたメダカの群れが泳いでいた。

 中茎さんは95年に発足した「メダカ里親の会」の事務局長だ。栃木県職員として農地改良事業に携わる中で、生き物が減っていることを実感していた。宇都宮大で農業水利を講じていた会長の水谷正一さん(72)らと勉強会を重ね、環境の変化に敏感な野生メダカの保護に乗り出した。

 県内の生息地44カ所を継続調査している。昨年は5カ所で生息を確認できず、3カ所でわずかな数しか見つからなかった。「生息地は規模が小さく、水がいつ切れるかもわからない非常に脆弱(ぜいじゃく)な状況です」と水谷さんは言う。

 若い人が集まらなくなった里親の会の高齢化も課題だ。活動の見直しが必要だと、中茎さんや水谷さんは考えている。

水を抜くと、いるはずのない生き物が

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